18日に告示される宗像市長選挙は3人による争いとなりそうだ。現在のところ立候補の意思を表明しているのは、現職で民主、自民、公明、社民推薦の谷井博美氏(69)、新人で元宗像市職員の村田維信氏(63)、同じく新人で元陸上自衛官の森田卓也氏(37)の無所属3人。しかし、選挙は事実上の一騎打ちとなる見込みだ。このうち谷井博美氏は、2001年より宗像市助役を務め、06年より市長に就任。9年に渡り、宗像の市政運営に携わってきた。選挙戦を迎えるにあたり、宗像市の現状をどう見ているか。その認識と問題の解決策と、時代が求める市長の役割、選挙戦の展望などについて、告示に先立ち、谷井氏へインタビューを行なった。
Q1.宗像市の現状について
<人口及びその構成>
宗像市の人口は横ばいが続いていますが、そのなかで高齢化が進み、現在は20%を超えています。特に高齢化が進んでいるのは、日の里団地や自由ヶ丘団地です。高齢化が進むと、当然、自然死も増えるのですが、宗像市の人口が変わらないのは転入者が増えているからです。主に30代前後の働き盛り世代が移住しています。たとえば、宮若市のトヨタ自動車九州に働いている人には、宗像市から通勤している方が多いです。
移住者が多い理由は『住環境の良さ』にあります。宗像市には自然と文化、歴史があふれています。さらに、子育て支援として「子ども図書館」「青少年センター」を設置・充実しました。保育所の待機児童はゼロを維持しています。また、人口に比して犯罪数が非常に少ないという治安の良さも特長のひとつです。宗像市は、企業法人税ではなく住民税と固定資産税が主な税収でありますから、産業を誘致するのではなく、若い人たちが住みやすい環境を整えて定住化を図り、人口を増やしていかなければなりません。
そのための施策として、新転入者への補助金制度を充実させます。定住を条件にUターン者へ、住宅ローンを補助するといった内容です。
また、「安心・安全のまちづくり」のための災害時における緊急連絡システムを早急に確立します。ただし、無線機を利用する従来のやり方ではなく、携帯電話を利用したシステムを考えています。これはコミュニティを活用し、まず市から各コミュニティの会長へ伝達するやり方です。地上波デジタル放送も活用も考えています。
市長として市民の意識がとても高いことを誇りに思っています。十数年前から、「地方分権下の地域分権」という考えに基づき、小学校区で分けた13の地区にコミュニティを設置しています。それぞれに行政権限と自由に使える交付金を支給していますが、とても上手く機能しており、市政運営の大きな力となっているのです。コミュニティの活動は全国的にも注目を集めており、これまで約300団体が視察に訪れています。また、宗像市では、ボランティアやNPOの活動も盛んです。その活動拠点となる市民活動交流館・メイトム宗像を整備いたしました。今後も育成・支援を積極的に行ないます。
<社会福祉>
発達障害のための「発達支援センター」を設置しました。発達障害は、見た目では非常に分かりにくく、突然、精神不安定になるなど、支援が難しいとされる障害です。同施設では乳幼児から小中学生までの発達相談・支援、療育を実施しており、県内でも先進的な取り組みとして評価されています。
その一方で、年々増加している高齢者にとり、最も問題となるのは移動手段です。その対策ということも含め、各コミュニティが運用する「コミュニティバス」を試験的に導入しました。そして、これとは別に、4系統の「ふれあいバス」を運行しています。これは西鉄バスの路線と競合しないところで、宗像ユリックス、メイトム宗像、中央公民館、市役所といった施設を結ぶバスです。ゆくゆくは全コミュニティでバスを運用してもらい、高齢者の方の移動が便利になるようにしていきたいと思います。
(つづく)
【谷井 博美(たにい ひろみ)】
1940年愛知県名古屋市生まれ。幼少より熊本で育つ。63年、熊本大学法文学部を卒業し、福岡県庁に入庁後、福岡県鞍手福祉事務所に勤める。88年、県立小倉高等技術専門校長に就任。89年、県環境保全施設計画室長、92年、県農政部副理事兼農政課長、94年、県企画振興部空港対策長、96年、企画振興部長と、県の要職を歴任。99年に福岡県庁を退職し、空港周辺整備機構福岡空港事業本部理事に就任。01年、宗像市助役、03年からは新宗像市助役を務める。06年、宗像市長に就任。趣味は山登り、読書、家庭菜園。
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