<義による当然の行為>
16日の朝、耳寄りで「ディックスクロキの取引業者インサイダー取引の疑いで捜査」を報じた。取材をしてみると「様々な経営者がいるものだ」と痛感した。耳寄りに登場していた株主で取引先の経営者は、「会社が14日に倒産するのはわかっていた。だが株を売り逃げする行為は一切しなかった。恩を仇で返すような犬畜生の行為をできるわけがない。売り逃げした連中の顔が浮かんでくると胸糞が悪くなる」と語る(ディックスクロキは2008年11月14日民事再生法を申請した。その12、13、14日の株売却行為がインサイダー取引に当たるとして金融庁が調査を開始している。
冷静に分析して発言する経営者の意見を紹介しよう。「私も株を売りませんでした。経営者として損を防ぐ行為をするのは当然です。だから売り逃げしたくなる気持ちは理解できます。ただ倒産前後の株は1株100円前後でしたから、仮に1万株持っていても100万円にしかなりません。クロキさんとの付き合い、儲けさせてもらっていた立場で法に触れるような株売却に狼狽するのはいかがなものかと思います」。
<1年間、地獄の苦しみを味わう>
この冷静な経営者は1年間、地獄の苦しみを耐え切った。どうにか企業を軌道に乗せる目途をつけた。結果としてディックスクロキにはさほどの実害はなかった。ところが世間がそう見なかった。「あの会社は必ず連鎖する」と烙印を押されてしまった。入札において最低価格で落としても施主から断られたことがあった。それより辛いのは入札指名から排除されたことである。平成初頭において大口の不良債権のパンチを浴びたが、当時は仕事が沢山あったから事無きを得た。しかし、今回は違う。工事がストップした。受注が半減するなかで組織の立て直しを余儀なくされた。本当に辛酸を舐めた。一番、気が滅入ったのは、人員の希望退職を募ったときであったそうだ。
1年経過してどうにか規模縮小の整備が完了した。
「振り返るに、クロキさんの勢いが永遠に続くことはないと案じつつも、流れに身を任せてきました。この優柔不断さは経営者である私の責任です。もしも20億の工事を仕掛けていたときにクロキさんが倒産していれば我が社も連鎖の運命でした。完全にアウトです。不幸中の幸いかもしれません。受注が減っていた時の倒産でしたから助かったのです」と総括する。
苦労もあったが、勉強にもなった。この経営者は自信をもって力説する。「いまならば東京でも北海道でも全国一円で受注できます。10億規模なら平然とOKです。取引業者が皆無なところでも段取りに不安はありません。クロキさんから鍛えられたお陰で、我が社の施行レベルは段違いにレベルアップ。福恩は頂きました。功罪相半ばというよりは、プラスメリットの方が大きかったですね」。
経営者たる者、自社防衛に専念する姿勢にはそれなりの義を貫くことが肝要であろう。世間は貴方を目撃している。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら