今、日本中のどこへ行っても、「厳しい」、「大変」という言葉をよく聞きます。その背景には、消費者の低価格志向により、ビジネスがますます窮屈になっている状況があります。
一歩を突っ込んで考えると、消費者が求めているのは安いながら良いものです。いわゆる、「高品質、低価格」。しかし、それこそ、二律背反の要求になります。高品質を達成、維持するのに、費用がかかる。低コストではそれなりの品質の商品しかできません。
日本の消費者には、「品質が良いのが当たり前」という意識があります。でもそれは日本だから。日本は『世界一品質』の代名詞です。「It◜s a sony !」のロゴはその例のひとつ。高品質を前提に、安さを求めるのが、今の日本の消費文化です。
一方、海の向こうの中国はどうなっているか。上海を例に見てみましょう。
現地マスメディアからは、「低価格競争が激烈」との印象を受けます。たしかに、収入の格差を考えれば、それは当然なことです。安価な製品が豊富に流通しているなか、選択するには値段が主な要因となります。また、安価な製品なら、壊れてもまた安いものに買い替えればよい。安値に飛びつくのは消費行動の中心なのです。
でも、安さの反面、品質は大体粗悪です。それも現実。現段階では、中国企業の大部分の商品は、日本の品質レベルからかなりの差があります。技術研究開発から工程改善まで、設備などのハード面から日常工場管理などソフト面まで、コスト削減の徹底がまだまだ十分になされておりません。『安くていい物』が作れないのです。
その現状を踏まえると、人々の認識はどうなるでしょう。「安いものは壊れやすい」「あまり期待できない」「いいものはもっとお金を払わないと手に入らない」。そして、高品質のものに、相応の対価を支払う心構え、「高品質には高価格」という意識が芽生えてきます。
実際に上海では、近年の収入増加に伴い、消費文化が少しずつ変わりつつあります。人々は安価な商品ばかりではなく、品質のいい物を追求するようになりました。結果として、「高品質・高価格」な物の売れ行きが、次第に伸びています。
(つづく)
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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