飲食店街で金曜日の集客数が上がる、いわゆる「花の金曜日」。今の中洲でも、金曜日は集客数が上がる。しかし、昔ほどの増加は見込めない。不景気が一番の要因である。土曜日に仕事をする人が増えたからだ。また、明日も仕事となれば、通勤や仕事で車を使う人は飲酒を控える。そもそも景気に関係なく、飲酒運転の取締りが厳しくなって以来、「客の飲む量や集客数が減った」という店は増えていた。
以前は「今日は多いね」と言っても、「今日だけですよ」と軽く返されていた。大阪の商売人で言うところの「ぼちぼちでんな」という返事だ。しかし今は、切実な表情で「本当に今日だけなんです」と返ってくる。
事実、カレンダー上の休み前日でも、客が全くいない日もあれば、火曜、水曜といった週の中日なのに、客が多くて入れないときもある。しかし、店の経営者は「全体で見ると客の入りは減っています」と口を揃える。つまり、集客数のばらつきが激しくなっているということだ。
日によって、集客の入りが予想できないとなると、店の経営にも影響が出てくる。もっとも困るのはホステスの出勤シフトだ。「金曜日に女の子を増員していても、お客さんが少なくて、やむをえず帰ってもらうこともあります。逆に、平日だからといって少なめにして人手が足りないことも...」と、あるラウンジの店長は愚痴をこぼす。
働く側も困惑している。「昼の仕事もあるので、毎日入るわけにはいきません。でも、日によって当たり外れが多いから、3日入った週よりも2日入った時の収入が多いときもあります」と、ある派遣コンパニオンは現状を語る。どの日を選んで出勤するか、稼ぎはもはや運次第というところだ。
一方の客側も混乱している。客が少ないと思われる平日をねらって遊びに行っても、客が多いために長い待ち時間が生じてしまうこともしばしば。そうかといって「今日がダメなら明日」という具合で、時間に余裕のある客は少ないだろう。
そのようななかで「月曜の集客数が増えた」という店が散見される。言うまでもないが月曜は週の頭。土日の休みが終わり、仕事という現実に引き戻される、少し憂鬱な日ではなかろうか。あるいは、週の頭からギブアップ、現実逃避に走るお父さんたちが増えたのか。その理由は定かではない。
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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