<1年後、事態はさらに悪化>
2009年5月15日、高松組(本社・福岡市中央区薬院、代表取締役高松宏氏)が自己破産を申請した。負債総額65億円であった。業界には激震が走った。1916年4月創業の同社は地元の老舗を代表するゼネコンであった。また5代目に当たる高松宏氏は名門・福岡建設協力会の会長に就いた"業界の顔役"であったし、様々な経済界の要職をこなしてきた。それゆえにその影響力の大きさ知る関係者は悲鳴をあげたのである。
だが冷静さを取り戻し、弊社が徹底した分析・連載レポートを公にした。そこで判明したことは、高松組が粉飾決算の上塗りをして永年、世間体を繕ってきたことだ。その辻褄合わせが不可能になり、経営を投げ出したのが真相である。取材するほどに同社の倒産を一企業の経営能力の未熟さに帰結させることは容易なのだが、現実はそんな生易しいものではない。一企業の枠を留まらず建設業者全体の浮沈に関わる問題がクローズアップされてきたのだ。
業界全体の深刻な問題とは「建設請負業が商売として成立するのか」という命題である。「請負という枠の意識で利が得られるのか」、「受け負けで企業は破滅させられるのではないか」という危機から免れるのかというテーマだ(この赤字受注の惨状は次号で触れる)。結論から先に述べる。高松組が倒産して1年が経過したのだが、請負業の環境は一段と厳しくなった。どこも「廃業しようか」と迷い続けている。
<激変時代とは、消滅の危険性と背中合わせであること>
今回の激変時代というのは「世の中が大転換するという長閑な意味ではない」ことを肝に命ずるべきだ。激変する過程で己自身が消滅する危険性があることの覚悟が必要なのである。まず日本民族の消滅も想定できることを認識すべきだ。何故、そうなったか。日本人が子孫を残す義務を怠ったからである。自分たちの怠惰な生活を維持するために、子供育成の苦労を忌避したから日本民族の人口が減に転換した。2009年は17万人も減っている。遠い昔には飢饉で一時、人口減に陥ったことはあったのだが、今回のように平時の時代に日本民族の人口が減少に転ずることは初体験である。
我々はローマ帝国の興亡を聞かされてきた。この帝国はヨーロッパ、北アフリカ、中近東の世界を席巻した。ところがローマ市民は市民としての義務である軍隊への服務をサボタージュするようになった。結局のところ帝国防衛を傭兵に頼らざるような始末になった。気概を失ったローマ市民の未来は侵略される運命しかなかったのである。このローマ帝国の衰退はまさしく当世の日本を物語っている。1970年以降、安逸な生活を過ごしてきた日本民族の将来は暗雲が立ち込めていると断言できる。
ビジネスにおいて人口が減るということは日本の市場が狭くなるということである。建設請負業だけが先細りするということではない。全業種において日本の市場には未来がないということだ。ここにきて飲食業一例を取って見ても「いざ、いざ!!中国の大市場で勝負する」と進出ラッシュの様相を呈している。スーパーゼネコンも海外に活路を見いだしているのだが、ドバイでは大きな赤字を抱え苦慮している業者もある。まさに国内、国外の市場おいて袋小路に立たされていると言える。
(つづく)
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