<3,800億円が消える>
今回の激変時代には、業種を問わずに商売の基盤が粉砕され消滅する危険性がある(建設請負業だけが淘汰されるのではない)。だから、根幹から見直し、再構築することが問われる。
あの朝日新聞社を参考にしてみよう。国民の『オピニオンリーダー』としての歴史的な役割は、日本人の誰しもが認めてきた。経営面ではある種の庇護もあったので、凄い収益を誇り内部蓄積が可能であった。ところが、若者が新聞を読まない激変時代に突入した。ネットを通じて情報を得ることができるから、生活に不自由しないのだ。あと5年もすると、35歳以下の若者で新聞の宅配読者は皆無になるだろう。2011年まで見通すと、7年間で4,000億円の年収規模が3,000億円に減少することが予想される。要は、1,000億円消滅する可能性が濃厚になっているのである。
ネットの普及で、『情報はタダ』という意識が浸透してきた。我々、経済情報を発信する立場も、余裕のない環境に落とし込まれた。『ネットIB』で日々情報を発信しているが、こちらの気合を抜いた記事にはものの見事にアクセスの潮が引いていく。逆に、熱心に想いを伝える記事を満載すると満潮になる。1日でそのアクセス数は1万の差が出る。「タダで情報を伝えてやっているのにわがままな奴らだ。勝手にしろ!!」と言ってしまえばお終いである。ここは、「どうやって、タダのアクセス者を翻弄できるか」の方程式を辛抱強く解明するほうが賢明だ。「いずれ黄金の鉱脈に当たるであろう」と信じて努力している。そうでないとやっていられない。建設請負業の皆さんは、鉱脈を当てるための努力をどれだけしておられるのかな?
福岡の流通の雄であったベスト電器のことを度々、報道してきた。創業した北田親子が亡くなり、いとも簡単に企業とは衰退し消滅の危機に直面するかを目撃させてもらった。企業戦争は非情なものだ。敗北すれば哀れなものである。三代目社長は癌に侵されているという情報も耳にした。一時は『家電小売全国一』の名誉に浴したベスト電器の3,800億円の商圏が、木っ端微塵になろうという風前の灯火状態だ。希望退職を募っているが、1,000人からの失業者を生んでしまったら、福岡での再就職は難しいだろう。
<ドライな淘汰通告は加速化する>
百貨店の業態も揺らいでいる。10兆円の市場が5兆円に激変している。勝ち組であった伊勢丹百貨店でも、かつて燦々と輝いていたような威光はない。どうしようも打つ手がないのは井筒屋だ。北九州という制約された市場では、打開策には限度がある。久留米井筒屋が廃館になった。筆者の知人の売り子さんは、博多にオープンした店舗に久留米から転勤した。そして、リバレイン店もクローズの事態となった。売り子さんは久留米から小倉まで6カ月間、井筒屋本店に通った。そして今回の希望退職に応じた。「当分、職はない」と覚悟している。
ここで強調したいのは、「自分はこれだけ精一杯したのだから、いくらの対価が欲しい」と叫んでみても「認められない厳しい現在なのだ」ということだ。この売り子さんも、井筒屋の動向に浮草のような流転を繰り返した。「一生懸命にお客に尽くした」と懇願しても、『激変消滅の通告』を受けた企業では虫ケラ扱いしかない。建設請負業においても、職人さんが「俺の技術は日当2万円」と頑固に主張しても認められないのだ。頭の元請けの建設業者が赤字で苦しんでいれば、一職人さんの立場を考慮することはない。いよいよ次回に赤字の惨状について触れるが、高松組は採算割れで生き倒れになったのだ。
(つづく)
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