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コダマの核心

高松組倒産1周忌に臨んで~建設請負業は危機を乗り越えられるのか(3)建設請負が消滅する時代(後)
コダマの核心
2010年4月23日 14:47

<面子にこだわる>

 今から振り返ると2004年3月に竣工した九州国立博物館を受注した時点が、高松組にとって最後の栄華であったようだ。また3年前の2007年3月期において待望の完工高106億円に達した。100億円という水準は高松宏社長にとって恋焦がれていたものであった。それが2年後には敢え無く倒産するのである。なんという皮肉なドラマであろうか。今後、詳しく指摘することもあろう。今回のバブルという時代の勢いに乗って高松組は実力を超えて100億円の完工高を突破した。ところが引き潮の目に変わったところで行き詰ってしまったのだ。
 同業者のなかには70億、60億の工事高を記録して1年で売上半減するという大ピンチに直面したところもある。これらの企業は必死で苦しい局面を凌いだ。激変時代においてしぶとく適応・対応する能力を発揮したのである。ではどうして高松組は潰れたのか。「あまりにも恰好をつけすぎたからだ」というのが結論だ。倒産する2年前から同社のダンピング受注の噂話は囁かれていた。いよいよ赤字の惨状の核心に触れるが、これは請け負けのレベルを超えている。面子に拘わらなければ赤字受注の結末は予測できたはずであった。早いうちに経営を見切りつけるべきであった。
           
<足元をみられる>

20100422_kodama01.jpg 一例だけ報告する。高松組が写真のビルを契約した(写真参照)。その矢先に自己破産を申請したのである。このビルの現地を踏んだ。デザインも素晴らしい。生コンの打ちっぱなしの工法も輝いている。鉄骨柱の軸組みは仮にマグニチュード10に襲われても倒れないほど頑丈な造りである。2階まではオフィスに使用されている。3階から8階まではファミリータイプのアパートになっている。一所帯の広さが70~80㎡ある。階段、廊下のスペースがゆったりしていて開放感がある。屋上には緑化ガーデンのスペースが確保してあり居住者一軒につき5坪の広さになっている。「これなら満室になる」と直感した。管理会社に聞いてみたら案の定、満室状態なのだ。
 素人の筆者は「このデザイン力・ハード・ソフトのかみ合わせからいけば総工事代は4.6億円かな。競争が激しいから4.5億円で落札したのではないか」と値踏みした。だが、現実は予想をはるか下回る3.6憶円で高松組が落としたのである。同業者は仕留められたから妬みで言うわけでもないが、淡々と「高松さんは最低5,000万円の赤字を被ることになった」と証言した。高松組が安く受注するのは勝手だが、前金が欲しい。施主に前金を要求する。この行為をストップしておれば問題を複雑にしなかった。
 施主もお人よしではない。「安くしてありがとう。高松さんには本当にお世話になったから前金を払うよ。4,000万円払いましょうかね」とは言わない。「払いましょう。その代わりしっかりした信用ある建設業者さんを工事保証人にしてください」と切り返してきた。高松組側は「ハイハイ」とひとつ返事で業者を連れてきた。連帯保証人の業者は毛並みが抜群だ。施主は安心してOKした。
 結果、この業者は前払い金と本来の予想される工事赤字分とを背負う形となった。赤恥を掻きついでに穴を拭いた。高い授業料を払ってしまった。高松組の倒産以降、建設業界ではどんな深い信頼関係があっても民間工事の保証をする慣習がなくなった。同社の倒産後、一例を紹介したが、同様の例が無数発覚された。この高松組の採算割れ受注は請け負けの本質からは脱線している。


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