<県内生コン アウトサイダーの雄>
同社の生コン販売先は、本社のある飯塚市を中心とした筑豊地区はもとより、福岡市内およびその近郊の地区へもおよんでいる。協同組合には加入しておらず、福岡県内のアウトサイダーの代表格でもある。とくに、福岡地区生コンクリート協同組合の組合員企業・工場は、同社の動向を戦々恐々と見守っている。09年3月期における福岡地区内の生コン出荷量は、約110万m3。同社出荷量を売上高から算出すると年間約24万m3で、同地区内出荷量の約21%を占めるからである。
JISの規格により、生コンは90分以内に現場に納入しなければなららない。同社が、八木山峠バイパスあるいはショウケ峠を越えて福岡市内の西部およびその近郊へ納めるにはギリギリの時間ではある。しかし、福岡市東部・東南部や中央地区、太宰府市・大野城市・筑紫野市への納入は約40~50分前後で到着しており、品質上の問題はなさそうだ。さらに、販売価格が同地区協同組合価格より1,000円前後安価で8,000円/m3台(地区によっては7,000円/m3台とされる)。1m3あたり1,000円前後違うと1つの施工現場において数百万円、規模によっては数千万円のコストが圧縮される。ゼネコン各社が、同社へ発注するケースが増える理由だ。
コストに対するマネジメントが強化されるなか、同社の存在は、ゼネコン各社にとっては頼もしい存在と言えよう。より安価に販売できるのはなぜか。同社の取引先である麻生商事(株)から筑豊地区にプラントがある麻生ラファージュセメント社のセメントを納入できることで、福岡地区の協同組合員より原材料における運搬コストを安く抑えて購入できるアドバンテージがあるという点が挙げられる。
また、「麻生側から見れば坡平産業は上得意。販売価格に関してフレキシブルに対応していると聞かれる」と福岡地区の業界消息通は語る。麻生側に近い業界消息通によると、「麻生側において"表向き"は、どの取引先ともあまり変わらない価格でセメントを販売している。だが、上得意先の坡平産業は、セメント運搬車を所有し、近隣である麻生のセメント工場に取りに行く。その行為で単価を下げて、他の生コン工場より安価で購入できる」という見解を述べた。麻生側に同社との取引について取材したが、明確な回答はなかった。
一方で、「麻生グループは福岡地区生コン協組内に工場を持っているが、生コン製造事業とセメント販売は別。組合側から見ると競合であろうが、ビジネスとして割り切ってアウトサイダーである坡平産業にもどんどん供給する。衰退しつつある業界において、活況である坡平産業に対しては特別な存在であることは分かっている。同じ飯塚が拠点で、お互い大きなメリットがあるから、良好で深い関係が築かれている」と断言する福岡地区生コン製造関係者。
しかしながら、07年3月に三井住友建設から大洋基礎に対し発注された、福岡市東区のオリエントクラブビルの基礎工事。請負代金は3,097万5,000円。大洋基礎は工期内にコンクリートの杭を打ち、同年4月28日までには完了したはずであった。
しかし、同日の検査で、杭の一部にコンクリートの充填不良が見つかり、その後の検査では全24本のうち22本に同様の瑕疵があることが判明した。三井側は補修工事を施し、マンションの構造上の安全性を速やかに確保。だが、大洋基礎の施工不良により119日間のロスが生じたとして、三井住友建設は2億3210万円の損害賠償請求を起こすこととなった。
これに対して大洋基礎は、逆に請負代金の未払分の請求を訴え出ており、この係争は今も継続している。この工事に使用された生コンが同社の生コンであったことは、周知の事実である。「坡平産業の生コンは、打設中にトラブルになる場合が多い。できれば使いたくないのだが」と県内のコンクリート打設関係者は語る。
【河原 清明】
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