記事表題の『義母』とは、妻になる女性のほうの母親です。この言葉が、近年、上海の新聞や雑誌で度々見られるようになっています。
その意味は「義母の要求通りにマンションを持たないと結婚を許してもらえない。それどころか、結婚前に男性がマンションを購買することは義務付けられている。マンションが手元にないと義母から許可が得られない」といったものです。
日本でそんな話をすると「あまりにも即物的に物事を考えすぎではないか」と批判されるかもしれませんが、残酷なほどに上海の現実は厳しいのです。
その背景にあるのは、急騰している物件の価格です。統計によりますと、1999年における上海の物件平均価格は1m2あたり約3,000人民元です。ところが2009年末には、1m2あたり19,000人民元に近づいてきています。それに比べ、同時期の平均月給額の上げ幅は3倍程度で留まっています。
こういう状況が続けば、庶民にとってマンションは、ますます手が届かなくなってしまいます。だからこそ今のうちに、手に入れておかなければならない。
上海の社会全体には「住まいを整えてから結婚する」という認識があります。実際に、筆者の身近で結婚した人々のほとんどは、両親の家とは別の自分たちのマンションに住んでいます。
もし、女性が両親の反対を無視して結婚し、賃貸アパートで暮らし始めたとすると、周囲から奇妙に思われます。この行動を元に作られた「裸族」は流行語になりました。これは"何もない"のに結婚するカップルのことです。
娘の幸せを願う義母の考えも理解できます。
「マンションさえあれば、結婚後にゆとりのある生活が過ごせる。マンションが買える男性が相手なら、生活費に困ることはないはずだ」「賃貸マンションにいても、いつ買えるか分かったものではない。マンションはあくまで買わなければいけないものだ」。収入と価格のギャップが拡大し続けていく見通しのなかでは、将来より今持っているほうが安心できるのです。
では、どんな男性が、義母が望む条件を満たすのでしょうか?
今の水準なら、普通の大卒は10年ぐらい働かないと頭金も貯められません。したがって、30歳以内で結婚できるのは富裕家庭の子ばかりです。父母がもう結婚用のマンションを手配してくれたとか、頭金を払ってくれるとか。実際そういう子らは就職後に素早く"予約"され、早ければ、25、26歳で結婚することになります。でもそれは、全体から見るとほんのごく一部です。
(つづく)
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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