<抜群の財務内容と政治献金の力>
同社の直近の09年7月期における財務内容に焦点を当ててみよう。売上高は42億228万円でピークであった08年7月期の66億6,312万円より36.9%ダウン。公共工事削減の流れが同社にも大きく影響し、土木建築工事が14億1,506万円と08年7月期と比較して58.9%の大幅ダウンを余儀なくされたことが業績悪化の大きな要因となった。
一方の生コン製造販売の売上高は、27億8,722万円と08年7月期と比べて13.4%のダウンに留まる。我が国の生コン市況は全国的に出荷量が毎期前年対比で約20%減少している状況を見ると、健闘していると言っても過言ではない。これは、ただ生コンをより安価で納入しているだけでできることではない。坂平代表は、自らトップセールスを実践し、月に1度は必ず得意先を訪問。"剛腕"だけではなく、自ら営業活動を行なうというきめ細かな営業活動が同社の生コン事業の屋台骨となっているのだ。
同社の純資産は43億8,632万円。比率にして74.4%と、抜群の安定感を保っている。流動比率・当座比率とも300%を超え、固定長期適合比率14.36%と財務の安全性が非常に高く、安定した内容である。
とくに注目したいのは現預金39億8,289万円で、これは年商に匹敵する。手元流動性比率は14.2カ月と、高水準の数値である。1年分の売上高と同等の現預金を所有する企業は、現在はごく稀であろう。財務面は健全すぎるほど健全であり、今後もますます同社の生コン事業は磐石となる。
ある県内生コン関係者は、「福岡地区の協同組合員が束になってかかっていっても坡平産業には太刀打ちできない。組合内で30(サンマル)プロジェクトなどを実施し、策を講じているが、坡平産業は何とも思っていない。一番良いのは、坡平産業を同協同組合に入れること。何度も協同組合側がオファーを出しているようだが、坡平産業はそのつど断っている。メリットがないからだ。いっそのこと、坂平代表を理事長にして筑豊地区までエリアを拡大し、広域の生コン協同組合に生まれ変わったら良い。坡平産業に関しては、対抗策より共存での方策を探った方が近道だ」と語る。
同社の政界への関わりも深い。政治資金収支報告書などによると、『自民党福岡県第8選挙支部(代表:麻生太郎代議士)』、『同党熊本県衆議院比例区第1支部』、政治団体『新財政研究会』で開催された政治資金パーティー『宏池会と語る会』に対しては政治献金および政治資金パーティー券購入、そして同党建設業界の職域支部である『自由民主党東京都未来の都市環境を考える会』に対して献金の履歴が残っている。(詳細は下表参照)
『宏池会』および『新財政研究会』は、古賀誠代議士が絶大な影響力を持つ政治団体であることは周知の事実。その『新財政研究会』に500万円の寄付を支出しているのが、『自由民主党東京都未来の都市環境を考える会』。この会も古賀代議士との繋がりが深いことは弊社"Net-IB"で既報済みである。坂平代表のこまめな営業力だけでなく、「定期的な政界へのカネのバラ撒きは行なわれている。建設関係に影響力を持つところをきちんと押さえている」と関係者は語る。ただし、「周辺の建築関係者から、"何らかの政治力に動かされて坡平産業の生コンを使っているのではないか"と揶揄される。だからたいそう気にするゼネコンや工務店もある。ある最大手のハウスメーカーが福岡市内の物件に坡平産業の生コンを使っているという情報が流れたら、次から組合工場の生コンを使い出したとも言われている。坡平産業の生コンを使う側も、神経を使っているようだ」との生コン消息通からの声がある。
いずれにせよ、福岡県内での生コン製造業でも指折りの企業であることに変わりない同社。今後も福岡地区の生コン市場を席捲し、盛隆していくであろう。蓄えた現預金39億円を元に、新たな事業展開があるのか。それとも、福岡地区と飯塚・筑豊地区生コン協組を新たに束ねて福岡県内生コン業界のリーダーとなるのか。同社の動向に注目したい。
【河原 清明】
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