<風に乗って3倍馬力を発揮>
今回の第2次バブルの風に乗って3馬力を発揮したのが、シノケン、ディックスクロキなどであった。シノケンは凌いで凌いだ。篠原社長は筆頭株主の立場を捨ててまで会社を防衛した。これは見事だ。一方のディックスクロキは頓挫した。
この2社が実力以上の規模拡大を図れたのは時代のなせる業である。しかし、実力を超えた結果を得るとしっぺ返しが必ずやってくる。アゲインストに対して適応できないとアウトになる。
福岡のマンションデベロッパーで急成長した企業の大半が1992年から95年の間に設立しものばかりだ。作州商事は全国展開の野望を抱いて年商200億円を突破して大躍進を果たそうとした。だが道半ばにして城戸オーナーは急逝した。その後の新しい経営陣は手堅い経営に徹している。丸美は貪欲な金丸氏の自爆でお終いになった。インベストは民事再生法の申請後、必死で再建にトライしている。今回も第2次バブルが弾けて様々なドラマを生んだ。筆者は3馬力の躍進後の舵取りの巧妙さで『生と死』の劇的な分かれ目を目撃させてもらってきた。このことには深く感謝するとともにあらためて的確な情報を発信する使命感に燃えている。
ただ残念なのは、第1次・第2次バブルを潜り抜けてきたユニカが容易に再生の糸口を見出していないことだ。今後は、老獪な経営者である緒方社長の指導力に期待したい。また、一番悔しい想いをしたのはソロンの清算についてである。業界のレベルアップに貢献してきた田原社長の過去の功績に対して敬意を表したい。デベロッパーの『ナンバー1』であった新栄住宅は不動産の多角化に方向転換した。強かな適応力が企業の命運を決める。
<高松組だけパージされる>
第2次バブルを迎えて『請負の概念』を捉え返すことなくマンション受注に没頭していた地元の建設業者は3馬力を生かして工事高を伸長させた。その銘柄としては九州建設、旭工務店、吉川工務店、未来図建設、高松組などがピックアップされる。このなかで吉川工務店、未来図建設は分譲マンション受注に特化したのではない。それぞれにディックスクロキ、シノケンという得意先を抱えた。
吉川工務店の場合にはディックスクロキの倒産で「連鎖風評」が流されたが、耐えきった。実害が最小限度であったことも幸いした。未来図建設はシノケンとの関係で東京進出も実行して完工高70億円台に達したのだ。最後のシノケンからの工事回収が完了するまでの3ケ月間、菅原社長は頭が真っ白になるほどの心理的圧迫を受けた。しかし、2社は売上規模を半減しても会社の存亡を賭けた戦いに勝利した。
高松組と同様に九州建設もまたユニカからの工事代金の延滞、マンション業者への焦げ付きという苦しみを味わった。同社の場合には福岡銀行とのタイアップで健全化の道を踏みだそうとしている。一方、80%がマンション・賃貸物件の受注である旭工務店は、オーナーであった吉弘社長が逮捕されるというアクシデントもあったが、社内が一致団結して急場を凌いだ。オーナーが排除されても会社を存続できたという稀有なケースだ。現在も吉弘氏は経営に参加できない体制になっているという(九州建設も旭工務店もピーク受注量の40%減は覚悟している)。結局のところ第2次バブルのパンクで高松組だけがパージされたのである。
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