今年3月15日にNet-IBで連載した「開かれたクリーニング業界のパンドラの箱」の記事について、いくつかのご意見をいただいた。鋭い指摘もあったので、ここでは改めて当該記事で伝えたかったことを記したい。
その前に、ひとつ反省することがある。それは、「違法に操業している業者は悪くないのか」という点を明記しなかった点だ。結論から言えば、これこそが業界自体の抱える問題であり、法に違反するのは悪い。まずこれだけは明言しておく。
あるクリーニング業者から次のような意見があった。「大根田様は業界にかなり同情的な印象を感じたが、私は同じクリーニング業者としてこの件は厳しく対応すべきだと思う」。その理由は「ロイヤル、きょくとうの2社は行政に虚偽の書類を提出し、不正を組織的にやっていた」からだという。また、「本来なら全ク連(全国クリーニング生活衛生同業組合連合会)がこのような業者を糾弾するべきだが、全ク連は業界に不正をしている業者が多いため放置していた」と内情を打ち明けた。
私は取材する過程で、クリーニング業界は大手と中小零細との儲け方の落差が非常に大きいと感じた。だからこそ、仮に国交省が法律を厳格化すれば、設備投資力に勝る大手だけが生き残り、コツコツ事業を営む中小零細はすぐにダメになってしまうと直感した。そこで、大手はともかく、多くの中小零細業者が一致団結して行政に声を上げなければならないと主張したかった。全ク連が業界団体として意見公告していなかったことも踏まえてのことだ。
きょくとう問題を扱うあるジャーナリストは「100円クリーニング、オゾンクリーニングという虚偽の名目を看板にして、それを売りに上場」しており、「業界の問題ではなく市場から資金を得ているということで業界をはみでた問題だという認識」で検証しているのだという。
もちろん、これはこれで重要な問題だ。「業界全体が不正をしているから自分は悪くない」というのは「木の葉を隠すなら森の中」で、何の問題解決にもならない。そんな言い訳がまかり通ることを許していた行政も悪い。
今回、私が同情的に感じた部分は「クリーニング業界のパイ自体が大きく縮小している」点である。個別企業の問題については別に検証する必要がある。幸いにしてか、4月に入り国土交通省は工場についての法解釈を見直し、管理の厳格化などを条件に溶剤使用を認める方針を決めた。6月中にも指針をまとめるという。こうしたことも含め、引き続きクリーニング業界の動向を見守っていきたい。
【大根田 康介】
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