<市場60%減>
建設投資額は、1992年がピークで84兆円だったが、2010年の見通しでは37兆円程度、ピークから60%減と見られている。この60%はどこかで耳にした数字である。あー、そうか! 福岡建設協力会が57社の組合員から22社へ減った率と同じだ。よしたものだ。市場の目減り分、業者の数も減るとは、市場原理が働いているということである。このような将来性のない業界では、過去の因習をすべて投げ捨てないと生き残れない。
投げ捨てるものとは何か? それは『請負意識』である。ただし、請負業を止めるということではない。請負すること自身をゴールインにするビジネスモデルを捨てるのだ。
前回、上村建設の『賃貸管理』すなわちストックビジネスに触れた。つまり、「請負のチャンスを永久ビジネスに固めよ!」と叫んでいるのだ。儲けがなく、油断すれば「赤字だ、焦げ付きだ」という状況に陥る請負で終われば、それまでの苦労は報われない。1円でも貰い続けられることが永続できる仕組みを構築することが経営戦略の要である。まだ"企業秘密"であるが、九州建設はこのテーマについて密やかに練りあげている最中である。「もう阿呆なところとは付き合いたくない」、これが本音だ。
<ストックビジネスは強力な武器>
ディックスクロキの社長であった黒木透氏はこの半年で不動産仲介料を4,000万円稼いだ。従業員を抱えなければぼろい商売である。しかし、不特定多数の相手を仲介しているのではない。彼は短期再生の道について、1週間、不眠不休で検討した。「そうだ! 以前のお客である家主さんたちを廻ろう」と閃いた。個人時代から含めると320棟の賃貸マンションを建てた実績がある。建歴20年以上のアパートも沢山あることに着眼した。売り替えしたいオーナーもおられる。買いたい意思のある顧客を探していけば成約率も高い。売った家主には新規の買い求めもある。二重のビジネスチャンスが潜在化しているのだ。勿論、会社を倒産させても黒木氏はオーナーの方々からの信用を壊していなかった。だからこそできる業なのである。請負業者の経営者も昔のお客の掘り起しをしたらいかがだろうか。
長崎出身で世界的な活動をしている有名な庭師・石原和幸氏は、石原デザイン研究所を経営している。英国王立協会が主催する世界最高峰のフラワー&ガーデニングフェスティバル『チェルシーフラワーショー』というコンテストがある。石原氏はこのコンテストにおいて、3年連続それぞれの部門で金メダルを授与した。最近では、モンゴルにおいて緑化事業プロジェクトにも関与する情報が流れていた。
同氏は自ら3億円の資金を投入してハウステンボスに有料の庭園を建設することにした。庭造りを請け負うのが目的ではない。庭園運営ビジネスを最終目的にしているのだ。だから資金造りのリスクも自己で背負うのである。
博多区に水のプラントメーカー、ゼオライトという会社がある。工場・ホテル・商業施設の水道代削減を請け負うことを本業としている。地下水を利用するプラントを設置するこの会社の得意先は、東京以西から最近では全国に広がって業績は好調である。それを支えているのがメンテビジネスだ。「一度、プラント設置の御縁があれば少なくても良い。末永くメンテのお手伝いをさせてください」と頭が低い。最近ではプラントを設置しなかったところからも「メンテ管理」の要請が相次いでいる。
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