ご周知の通り、今中国では、特に上海のような大都市において、物件価格が日本のバブル時代に類似するような急騰を見せています。そのようななかで、庶民から学者、公務員まで、幅広い人々が不平、不満、不安の声を出しています。今年3月に閉幕した全国人民代表大会の記者会見では、温家宝首相もそれを言及し、全力をあげて抑制することを発表しました。
高度経済成長と言われている中国の現段階において、この現象をどのように捉えたらよいでしょうか。不平や不満などの気持ちを受け止める反面、決して感情的にならず、物件価格そのものを冷静に見直すべきです。
誰の不満か、何に対する不満なのかを見極めなければなりません。
不満があるのはこれから物件を買う人、あるいは買う意思がある人です。既に物件を持っている人は不満どころか、価格の上昇に喜んでいます。家の価値が上がるからです。また、不満があるのは相応の購買力を備えている、ある程度の富裕層です。低収入の人たちは一緒に騒ぐことがあっても、そもそも市場では物件購入の対象外です。ゆえに、国の方針で低収入の人に対して政府は補助、保障制度を設けています。それらの支援や保障がまだ不十分であるとか、多くの人々がまだ恵まれていないとか、それは別の話になります。
物件購入を控える人は、現状がなかなか思う通りにいかないで、益々予想外の方向を迎えていることに、不満や不安が生じています。しかし、本当に買えないのかというと、それは一概に言えません。どこの、どんな物件を買うかによって、要求される購買力が違うからです。同じ上海でも、市内中心部の物件と離れた郊外の物件の価格には結構な差があります。同じ都心部でも、面積、向き、採光などによって、総価格もはるかに違います。不満があるのは、立地条件がいい、暮らしやすいところの立派な物件を買いたいが、なかなか手が届かない、そんな人たちが中心です。
そのような実情を把握したうえで、物件価格をもう一遍見つめるべきです。実際に物件はひとつの商品にすぎません。ただし、大金がかかる商品です。商品であるからには、以下に述べる内容が適用されます。
供給者は、どこで、どんな商品をいくらの値段で提供するか、自社の判断で決めます。売れるか、売れないか、儲けるか、損するかなどの問題は経営者で考えます。これはデベロッパーの権利でもあります。当然、売れないなら、最悪の場合、倒産などの責任を取らなければいけません。
一方の消費者においては、どこの、どんな商品をいつ選択するかは、全て自らの判断によるものです。判断する根拠として、自分の希望と経済力を両立しながら、そのなかで妥協し最終的に決定します。あくまでも、どのぐらいのお金があるかを考えて、希望の優先順位に即して、自分が気に入るものを選ぶ。強引に借金して豪華な物件を買っても、結局潰れるのは自分です。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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