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特別取材

薬学者が見た健康食品、ニセ薬はなぜ無くならないのか?(4)
特別取材
2010年5月 4日 08:00

長崎大学副学長・薬学部教授 中島憲一郎氏 中島憲一郎教授は、覚せい剤関連化合物の研究に長年従事してきたこの分野の第一人者。2002年に死亡者まで出した、「中国製ダイエット食品」(無承認無許可医薬品)の成分分析も行っている。研究室では、「覚せい剤など乱用薬物の分析」「医薬品の適正使用に関する研究」「脳内神経伝達物質の分析研究」のほかに、「機能性食品の品質評価」も大きなテーマに掲げている。健康食品にも大きな関心を寄せており、これまでにも赤野菜やノニ、冬虫夏草などで分析研究を行なってきた。同氏に健康食品に関心を持ったきっかけや、健康食品の孕む課題、展望について聞いた。

健康食品をゆがめる成分調整

 ――摂取しやすく作ってあるし、そのように作らなければならないのだし、今のお話からすると、何よりも摂り方の問題ですよね。

中島 そこが一番大きいのだと思います。また摂取しやすく安全基準に則って作ればよいのですが、そこを逸脱してしまうメーカーもあるわけです。余計なものを加える。化学物質を余計に加える。早い話が、ある成分ががんに効くとなれば、その成分だけ加えればいいじゃないかということになるのですよ。そうすると、それは自然に作られたものではなくて、別口にくわえられたものなのですね。これが健康食品と呼べるのかどうかということです。ですから、誇大宣伝をやって問題を起こしている製品というのは、そのように外部から加えたものがあるような気がしますね。
 純粋にお茶というのは昔から体にいいものだとされていて、日本茶なんていうのはビタミンも豊富だし、酸化防御作用もあると認められています。それにわざわざ痩せ薬を加えて健康茶として売る。そしてお茶の力として「痩せますよ」みたいな文句を付ける。これは明らかに成分の調整を行なっているわけです。そうなると、これは健康食品ではなく、まがいものになっていくのかなぁという気がしますね。

 ――化学物質を添加した食品は添加していない食品との見分けがつくのでしょうか。

中島 それがむずかしいのです。ただ私たち専門家は見分けるために10種類くらいの成分を分析します。ある成分が特異的に添加されているとすれば、そこの部分だけデータが突出しますから見分けがつきます。たまたまそういう成分があるばあいもあるかもしれませんので、そのときはある成分との比率を見比べて、天然物が1:8なのにこれが1:1になっているということになれば、全然違うということになります。そういうマップを作ることであるていど見分けることができます。これは麻薬とか覚せい剤とかが、どこで採れたかというときに使う手法なのです。これは北朝鮮製なのかアフガニスタン製なのかを見分けるばあい、産地によって工場なり原料なりで非常に特異的なものがあるわけです。
 このためにはその本物が手に入ることが第一の条件です。コントロール(対照)が手に入らないと比較のしようがありません。またいくつかの成分がわかっているばあいには、その標準比が必要になってきます。Aという化合物、Bという化合物がどれくらい入っているかを調べるには、それぞれの純粋な物質がないと定量ができません。何であるかを同定するときはおおよそできるのですが、量がどれくらいかを調べるにはきちんとそれが必要だということです。
 わかりやすくいいますと、ある物質に何が入っているかを調べることを定性といいますが、そのばあいにはLC/MS(Liquid Chromatography / Mass Spectrometry)やGC/MS(Gas Chromatography / Mass Spectrometry)とかいう手法を使えばある程度の類推はできるのですが、本当にそれかどうかを調べるには標準となる物質(標品)が必要だということです。それを元にして、サンプルのなかにどれくらいの量が入っているかを調べることができる。これが定量といいます。

(つづく)

【聞き手 田代 宏】

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