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コダマの核心

もう春は来ない この覚悟で請負業を貫く
コダマの核心
2010年5月 6日 11:12

<1年間地獄の辛酸を舐める>

 ディックスクロキ(以下、D社)が2008年11月14日、民事再生法を申請して倒産した。この倒産で(株)吉川工務店(代表取締役・吉川啓二氏・本社・福岡市中央区大手門3丁目8-22)は実害を最小限に食い止めた(中央区港のタワーマンションの工事代金も、最近回収した)。
 ところが、世間は厳しい見方をした。「吉川工務店は連鎖する」と疑われたのだ。たしかに、信用不安に陥る要素はあった。吉川啓二社長は、D社の取引業者協力会会長の要職にあった。また、D社からの受注が急増して、60億台の完工高に達していた。だから、世間で信用不安が流れたことには異論はない。
 しかし、経営者の執念と才覚で、ピンチは凌げるものだ。吉川社長は連鎖倒産から免れた原因を淡々と語る。
 「D社が絶頂のときにパンクしていたら、我が社も同時に昇天していた。倒産の1年前からD社の仕事量が減ってきたことで、我が社の受注も少なくなっていたことが不幸中の幸いであった。だから助かった」。
 この分析発言には、彼の率直な人柄が表れている。実際のところは地獄の辛酸を舐めたのだが、言い訳はしないのが同氏の信条だ。
 民間工事では施主から指名排除された。従来はお客さまであったはずのところからも、お呼びがかからなくなってきた。受注は半減した。受注規模が落ちた分、それに応じてリストラの断行を余儀なくされる。希望退職を募るときには涙が出た。苦労を分かち合った仲間の首を切る際には、心臓の動悸による強い圧迫で、一瞬、息が止まる思いがしたこともあった。潰瘍もできた。誰にも恨みを抱くこともできず、弱音も吐けない。「すべて、経営者である自分の判断ミス」と自分に言い聞かせ、自己を納得させてきた。
 悶々としていた時期、2009年5月に高松組が自己破産の申請を行なった。高松社長とは、同世代として経営苦労談義をしてきた同志だ。共同事業も一緒に行なってきた。何よりも、同じ建設協力会のメンバーで、高松氏は長年会長の職にあった。信頼の絆で繋がっていた間柄であった。
 高松組倒産の悲報を耳にして、「建設協力会の信用が落ちるな」と一時は悲嘆に暮れた。だが、立ち止まるわけにはいかない。「今後、建設業界の春は来ない。この認識の上に立って企業存続の戦略を練ろう」と決断した。高松組と心中するわけにはいかなかった。

<企業存続に尽くす>

 苦しい1年を凌いでいると、周囲が見る目も好転してきた。「吉川も頑張ってきたじゃないか。ここは一つ、仕事をやろう」というお客が回帰し始めてきた。
 だが、仕事の回復があったとしても単価は厳しい。特命で利益を得るような工事はない。徹底したコスト削減を行なって、赤字を食い止めていく努力・工夫は必要である。今のところはどうしても、受け負け請負業を脱するようなビジネス発想は生み出せないでいるが、ここは企画提案営業に注力していくしかない。また新事業のソーラー事業にも挑戦している。試行錯誤の繰り返しで、新たなヒントを得ることであろう。
 最後に吉川社長は、次のように結ぶ。
 「D社との取引はマイナスばかりはない。プラスもあった。D社の現場を受けた経験から、我が社の技術力が数倍のレベルアップを果たしたことは感謝している。東京でも北海道でも、全国どこから声がかかっても仕事をこなせる自信は持てた。20階建てクラスの高い物件にも尻込みしない。地元の同業者ができないようなそれだけ大きな工事ができたのは、D社のお陰だ。この蓄積は、20億円くらいの価値があると評価している。必ず活かせるチャンスが来るだろう」。


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