激変・大戦争の金融業界
「火ノ国銀行」という小説が熊本で話題になっている。同書のモデルは誰が見ても肥後銀行であることがわかる。詳細は後述するとして、元頭取の娘婿が頭取になるとは長閑なものだ。
オーナー経営者と目されていたあの福岡シティ銀行の四島氏ですら、娘婿を次期頭取に就けることに失敗した。それなのにサラリーマン頭取であった「火ノ国銀行」の長野氏が娘婿の甲斐隆博氏を頭取ポストに座らせられたとはどういうことだろう。肥後銀行は上場会社だったはずだが・・・。オーナーではない親子で頭取のポストをたらい回しできるなんて、金融環境はそんなに悠長かしら。
西日本シティ銀行の久保田頭取が牙を剥いた。証券会社を傘下において総合金融機関として攻め込むことを宣言したのだ。要は福岡銀行との全面戦争に向けて、布陣を終えたということ。頭取に就いた久保田氏はいままでは文化活動に注力していた観があったが、ここにきて一転、攻めに出た。背景には秀才・エリートの道を歩んできた同氏の負けん気がある。「自分が頭取のうちに福銀との差を埋め、追い越そう」という魂胆が透けて見える。
山口銀行も西日本シティ銀行の攻めの動きを察知したのだろうか。同行による北九州銀行設立は福銀・西日本シティの二行の激突に巻きこまれずに、独自のポジションを誇示するための組織戦略と読む。大票田である福岡県の開拓を巡って、地方銀行は生死を賭けた血みどろの戦いを展開している。
これと比べると熊本は金融機関にとって微温湯(ぬるまゆ)状態なのか!!肥後銀行さん!!そうではなかろう。福銀の仕掛ける攻撃を余裕で受け止めらますか?そうではないでしょうが!!いずれ墓穴を掘りますよ。
再度の金融再編の勃発
新生銀行が大きな赤字決算を計上した。これで青空銀行との合併が藻屑(もくず)化した。2行とも、一時はニュー金融ビジネスで復活を果たしたかの評価を得ていた。だが2008年9月のリーマンショック以来、2行の金融ビジネス基盤が粉砕された。結果として収益を得ることが困難になったのだ。2行は、いずれメガバンクの配下になることが確定したともいえる。新たな金融再編の序章である。
地方に目を転じれば、産業の活性化は進まず、疲労困ぱいしている。金融機関だけが燦々と輝けるはずがない。九州においてまともな第二地銀は消滅してしまった。信用金庫・信用組合も第一地銀との金利戦争で体質を疲弊させてしまっている。信用組合は壊滅、信用金庫も合併の果てに、地銀に系列化される可能性が囁かれている。経済成長なく、企業の元気がなければ、金融機関の数が減るのは自然の成り行きである。
甲斐頭取!!このくらいの金融情勢は把握されていますよね。近い将来、「道州制」の導入が具体化する可能性が高い。そうなる1県1地銀の存在意義が薄れる。九州の残された第一地銀の数が減るのは時代の要請となる。肥後銀行、鹿児島銀行、宮崎銀行、大分銀行などは、1県内での殿様商売の展開が難しくなるのだ。
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