ビタミンDはビタミンA,E,Kと同じ脂溶性ビタミンの1つで、欠乏すると小児ではクル病、成人では骨軟化症が起こる。また、ビタミンDは、体内のある組織で合成されて他の組織で活性化され、生理作用を発揮するタンパク質あるいはステロイド化合物のようなホルモン様な働きをするため、ホルモンの1つともいわれる。
20世紀初頭、イギリスでは小児にクル病などの骨の病気が多発しイギリス病と呼ばれていたが、イギリスのメランビーが1919年に仔イヌでクル病を発生させることに成功し、肝油を与えて治ることを証明した。ビタミンAを発見したアメリカのマッカラムは1922年たらの肝油中に含まれるクル病予防因子をビタミンDと命名した。ビタミンDにはD2からD7までがあるがD4からD7まではビタミンの効力が低く天然に存在する量も少ないのでビタミンDといえばD2かD3をさす。D2はエルゴカルシフェロール、D3はコレカルシフェロールという。
成人での骨軟化症は、日光浴・運動・ビタミンDをじゅうぶんに摂取することで予防できる。また、病気になればビタミンDの投与で治療できるが、老人性骨粗鬆症や閉経後骨粗鬆症は、医薬品である活性型ビタミンD製剤で治療が可能である。骨粗鬆症は加齢と共に骨量が減少することにより、体内での活性型ビタミンD(ビタミンDのホルモン型)の産生が低下してくることにより発生する。骨粗鬆症を予防するためには、若い頃から栄養と骨の健康に関心を持ち、日光の下での毎日の運動を心掛けることが重要である。
ビタミンDはここ15年、新たな研究が進んでおり、特にアメリカでの多数の研究者から、がん(大腸・前立腺・乳)、糖尿病、心血管症、感染症(インフルエンザ)、精神疾患(統合失調症やうつ病)、アルツハイマー病等に対しても効果があるとの多数の報告が出されている。
アメリカの国立衛生研究所のサプリメント局が最近刊行した「2010年から2014年までの戦略的計画」という書物では、唯一ビタミンとして、その重要性が言及されているのがビタミンDである。今後の研究の展開と私達の生活への応用が関心の的となる。
(つづく)
<プロフィール>
伊藤 仁(いとう ひとし)
1966年に早稲田大学を卒業後、ビタミンのパイオニアで世界最大のビタミンメーカーRoche(ロシュ)社(本社:スイス)日本法人、日本ロシュ(株)に就職。「ビタミン広報センター」の創設・運営に関わる。01年から06年まで(財)日本健康・栄養食品協会に在籍。その間、健康食品部でJHFAマークの規格基準の設定業務に携わる。栄養食品部長を最後に退任。
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