産学官協働プロジェクトが進展 需要高まる自然食品
バイオクラスター発足から3年
九州地域では、産学官のスクラムによる地域活性化プロジェクトが推進されている。九州経済産業局の主導による「九州地域バイオクラスター計画」がその代表格だ。機能性食品・健康食品の開発・量産化拠点の形成を柱とした産学官協働事業で、2007年9月に同計画の中核をなす「九州地域バイオクラスター推進協議会」(会長:小野友道熊本保健科学大学学長)が発足した。
中小企業における健食事業を相談受付から研究開発、製品開発、販路開拓、資金調達まで幅広くサポートしている。九州全域の技術およびそれに関わる研究者のネットワーク化による機能性評価システムを構築し、九州を拠点とする一大ヘルスプロモーション「フード・健康アイランド九州」構想のシナリオ実現に向けて活動している。参加企業は177社・団体に及ぶ(3月1日現在)。九州経済産業局局長の谷重男氏(当時)は07年の設立総会で、関係者250人を前に、「健康食品は21世紀で主役に躍り出る産業。九州の特性を内外に紹介していきたい」と力強く抱負を述べている。
3年を経て、健康食品市場は前代未聞の厳しい状況に直面している。全国的には4年連続のマイナス成長、昨年いくらか縮小傾向が鈍化したとはいえ、特定保健用食品市場までが過去初めての前年割れとあって予断は許されない局面に陥った。
九自協の理事長交代で期待高まる
健食卸で九州をけん引するのは九州・山口の百貨店を中心に全国で25店舗を展開するコダマ健康食品(株)(北九州市小倉南区)。06年に森谷健康食品、07年にリケン、09年には日健フーズと業界のシンボル的な健食卸が相次いで廃業・買収に追い込まれ、全国区の創健社やムソーも苦戦を強いられるなか、07年に東京の多摩センター三越に店舗を構えるなど業容の拡大を図っている。本社には通販事業部も設けられ、NB健食商材・化粧品などの販売も行なっている。主力商材は『大麦若葉エキスの青汁』。
九州市場では、消費者の安全志向の高まりから自然食品が見直されている。九州自然食品協同組合(福岡市早良区、理事長:荒木清治)のメンバーである(有)自然館(長崎県大村市)は同組合員のなかで急成長を遂げた一社。ヤフーや楽天へのネット出店にも積極的で徐々に売上を伸ばしてきた。今では組合の売上をも凌いでいるとされている。
「組合員にも大きな格差がある」とする荒木理事長。昨年急死した下司雅章前理事長の後継として就任した同氏だが、カリスマ的な前理事長の後任ということもありその手腕を問う声もあった。
「組合員のための組合、組合あっての組合員。地道な意見の吸い上げを行なっている」と話す荒木理事長。組合員のなかには後継者不足から廃業をやむなくされる店舗や、組合費3,000円や積立金2,000円の支払いにさえ苦慮するメンバーもあるという。「新規加入を勧めても、出資金30万円の支払いが壁になることがある」(同)。
荒木理事長は1人ひとりから個別に事情を聴いて、きめの細かい対応に努めてきた。
「かえって結束は強まった」という組合関係者の弁がちらほら聞かれるようになった。
現在、組合員は78店舗。ピーク時の30%を割り込んでいる状況だが、荒木理事長が就任してからは微増を示している。消費者が求める商品を取り扱っているだけに、今後の運営に組合員の期待がかかる。
九州には受託メーカーが目白押し
6年前まで、九州の健食メーカーは主に静岡や岐阜に製造委託を行なっていた。静岡や岐阜は受託製造のメッカとして栄えているだけに、今もその構図は大きくは変わらない。ただし、運送費や納期を考えれば「九州域内で発注したい」というメーカーも少なくない。
特定保健用食品の許可件数日本一を誇る(株)東洋新薬(工場:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)を筆頭に、プロポリスを柱とする森川健康堂(工場:熊本県甲佐町、代表取締役社長:森川俊雄)。さらに福岡に拠点を置く(株)JFCコーポレーション(北九州市八幡西区、代表取締役:原 毅)では、有機JAS認定工場でウコン、大麦若葉、マカを中心とした受託を行なうと共に、小ロット・低価格商品の受注に努めている。
日本バイオフーヅ(株)(宮崎市田野町、代表:四田美利)はPB・OEM専門の受託メーカー。原料供給から研究・製造・販売まで一貫したサポート体制を敷いている。ほかにもビワ茶を主力とする(株)王樹製薬(熊本市近見、代表取締役:島田修)、きび酢・紫芋酢の受託を行なうトーシン(株)(鹿児島市上之園町、代表取締役:鎌田照男)や工場を持たない企画提案型の受託メーカー・(株)アリイン本舗(福岡県大野城市、代表取締役:渡邉成昭)などがある。特に福岡にはこの手の企画提案型の受託メーカーが多く、海外の珍しい原料を持ち込んでオリジナル商品の提案を目指す。どちらかといえば一匹狼的な経営者が多い。ほかにも分野別に知られていない企業は数多く、周辺エリアの企業が利用しない手はない(表参照)。
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