奇妙に思われるかもしれませんが、上海の住宅マンション市場の販売面積、売上高などに関する政府筋の統計では、新築物件しか計算されていません。中古マンションが無視されるほど物件数が多く、全体の状況を把握できないのかもしれません。
しかしながら、統計上あてにならない中古マンションですが、普通の庶民にとっては、経済性と実用性を兼ねることによって人気が高まりつつあります。それも働き盛りの若者から定年退職した中高年まで、幅広い年代の顧客層に愛されています。
一体、どんな物件が売れているのでしょうか。
これらの中古マンションはほとんど1980年代から90年代半ばまでに作られた住宅団地にあります。都心部の人民広場からは、電車、地下鉄一本で着き、バスに乗り換えても1時間以内の距離です。ちなみに、上海市内バスの時速は10キロ余りしかありません。大体の物件は6階建てでエレベーターなし。面積が35から70㎡で、日本の基準で言うなら、1LDK、もしくは2LDKに相当します。
そのほとんどにおいて、6階のうちの特に2階から4階の物件が重宝されています。1階より採光がよく、5、6階より登りが気楽。もし、そういう物件の売却を仲介業者に依頼すれば、早ければ当日成約するか長くても1週間で必ず購入されます。
では、人気の秘密は何でしょう。第1は当然ながら価格です。
1m2ごとの単価からすると、新築とあまり変わりません。なかには、新築より高いケースもあります。しかし総額が、新築に比べてはるかに低いのです。
ポイントは面積です。90年代後半から近年にかけて建てられたマンションの大半は90m2を超えています。120から160m2の物件も少なくありません。したがって、面積の小さい中古マンションのほうが安くなります。庶民にとっては苦渋な選択結果ですが、結局のところ、賃貸よりもマンションを購入できたほうが安心できます。
一方で、結婚前に自分の夢だった広いマンションを購入する人がいます。しかし、それは多大な負債を作り、常に収入に悩まされるようになります。中国では、銀行からローンを借りる場合、日本より返済期間が短いため、毎月の返済に対するプレッシャーが重くなります。一旦会社の不況によって、収入が減ったり、リストラされたりしたら、返済が難しくなり、結果マンションを銀行から取り上げられることも考えられます。
第2は周辺の都市交通網が整っているということにあります。
売れている中古マンションが所在する住宅団地は20年以上運営され、インフラがほぼ整っています。バスや地下鉄、電車など交通機関が近くにあるほか、便数も多いため、待ち時間もわずかです。一方、新築マンションのほとんどは都心部から離れています。都市開発計画が実施されることで、元々上海市内区域の土地が徐々に利用済みとなり、郊外のほうへ推し進めることが決まっているからです。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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