テレビの広告を見れば、すぐ分かるように、近年に造られている新築マンションはほとんど昔の郊外にあります。新規開発の地区で、人口の導入も時間がかかるため、バスや電車があってもその運行間隔が長かったり、駅からマンションまでの距離が遠かったりします。その上、バスも電車も最終時間が市内に比べて早いのです。最終時間を過ぎたら、帰るために、タクシーを利用しないといけません。サラリーマンは、残業をしなければいけない日もあり、その際に大変な不便です。
上海で中古マンションが売れる理由、第3は日常の買い物が手軽にできることです。
中古マンションがある地区は、周辺に各種の商店が揃い、特に地元の人たちにとって、毎日の暮らしに関わりが深く、大変重要な生鮮市場があります。日本で生鮮3品がスーパーで買われるのに対し、上海では生鮮市場がその役割を果たしています。地元政府は建物を作り、商売人を誘致します。しかし、周りに数多くの住民、つまり消費者がいなければ商売人は集まりません。古い住宅団地は居住者がいっぱいです。住宅団地が大きいほど、生鮮市場の数も増えるし、商売の品目も豊富になります。それに競争もあり、値段も高くなりません。住民は、より安くより新鮮な食材を入手できるのです。
中古マンションの魅力は、2種類の顧客を引き付けます。
まず、学校に入学する年齢の子供を持つ若い夫婦たちです。何よりも家の近くに学校の有無を、真っ先に聞きたい人たちです。中古マンションの周辺には、小学校が必ずあります。子供は近くの学校に入学できるし、数多くの子供たちが同じブロックに住んでいるので友達もできやすいのです。一緒に登下校できるため安心です。しかも、十数年以上歴史がある住宅団地なので、地域の居住民委員会(日本の自治会のようなもの)があり、ある程度の治安も守ってくれます。
次に、定年退職した中高年です。病院(医療)のことに最も関心が高い人たちです。自分が歩ける距離以内に病院があれば、一番助かります。もちろん、古い町並みには、衣料施設が揃っています。また、交通機関が充実しているので、都心部の名門病院へ行くのも便利です。
現在、中古マンションの住宅団地に住む年寄りが増えており、老年部活チームの活躍が度々テレビや新聞に報道されています。参加者の間で交流を深め、楽しく日々を送れることから健康増進にも繋がります。
上海においては、中古マンションを単に古い住まいと読み取らず、むしろひとつの生活共同体として理解されるべきです。周辺には様々な施設が立ち並ぶ充実したコミュニティーです。人々はそれを選ぶことで、社会との繋がりを自分なりに構築していきます。
今後、庶民から益々スポットが当てられる中古マンションは、地元住民の一種の生活の知恵、または生活スタイルから人気を集めていると言えるでしょう。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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