<大卒のメリットが崩壊>
農民工とは、中国で農村部から都市へ出稼ぎに来る人たちのことです。
最近、中国で次の報道が注目を集めました。「弟が大学を卒業し、就職したところ初任給が1,500元。しかし、1990年代から広州市に出稼ぎに行き、現在、電子部品組み立ての熟練工となった彼の姉は、月収が2,000元を超えている」。
「ホワイトカラーを代表する大学生が、ブルーカラーを代表する農民工に負けているのか?」と世間では大いに話題になったのです。これは個別のケースに止まりません。ある政府機関の調査では、大学生と農民工の間の給料の格差が拡大する傾向にあります。現在大卒の初任給が大体1,500~2,000元である一方、技術を持つ農民工が3,000~4,000元をもらっています。さらに上海では「乳幼児の面倒も見るベテランの家政婦は、5,000元以上出さないと雇えない」と耳にしたことがあります。
そこで、「たくさんの時間やお金をかけ、大学まで進学することがほんとに有意義なことか」と問われ始めたのです。賃金が示す皮肉な現実が、大学進学の価値を下げています。大学進学を断念し、熟練の労動者を目指したほうがマシではありませんか?
当然ながら、優秀な大卒がいれば、皆のお手本となる農民工もいます。一概にどちらがベターかは言えないです。しかし、昔のように、大学生が必ず農民工より優越性を持っていた時代は去ったのかもしれません。
<高まる熟練工の希少価値>
その背景には、中国の労働力市場の変化があります。
統計によると2000年以降、大卒の人数が毎年急激に増え続けています。01年は114万人ですが、04年には280万人に達しました。さらに、07年では495万人に到達しています。10年の今年は631万人と推測されています。
一方、経済の発達を見せている沿海部地域では、農民工を代表するブルーカラー人材の不足が起き始めています。それは70年代から実施されている『ひとりっ子政策』の影響だと考えられます。「農村部では、ひとりっ子政策が名ばかり。むしろ、ひとりっ子のほうが少ない」と言い返されるかもしれませんが、その前の世代と比較して考えてもらいたいのです。当時は5、6人の兄弟もいましたが、今はせいぜい2、3人兄弟です。したがって、仮に全員が出稼ぎに来ても、今は昔の半分以下の人数になるでしょう。
また、親の世代が精一杯努力したお陰もあり、農村部の生活にも次第にゆとりが生まれてきました。そんな環境のなかで育った子供たちには、父輩と同じく一生懸命に仕事をする姿が見られなくなっています。技術を磨き、熟練工を目指す意欲も低下したり、その養成の進捗状況が遅くなったりしています。結果、ある意味で熟練工の希少価値が高まるのです。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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