<とみ子さんが優勢>
現時点で予測すれば福岡市長選には立候補者として植木とみ子氏、現職の吉田宏氏、財界の推薦と自民党を中心にした公明党・みらいで推す官僚出身候補、共産党推薦者、市民運動団体候補の最低5名が考えられる。とみ子氏は「既成政党の支援はなくとも戦い抜く」と決意を示した。これは闘争宣言でなく、具体的な地域掘り起こし運動の展開を始めている。女性という立場も現時点では優位であり一番、当選の可能性が濃厚だ。断っておくが、本稿の目的は市長選の予測ではない。
話を進め、ほぼ確定している状態を予告しておく。再選をねらう吉田市長を推す団体が皆無となり、自力で闘う異常事態というか"ピエロのシナリオ"が成立することもあり得る。吉田氏は「民主党の推薦は要らない」と拒否する。それを民主党福岡県連副代表・江藤福岡市会議員はむきになって「どうしても吉田市長を応援します」と意地を張る。そんな漫画劇が生じる。
多分、吉田氏は参議院選挙において「民主党候補者を応援するわけにもいかない」と公言するだろう。「アナタはイヤよ」と三行半を突き付けられても「いや、アナタが好きよ。捨てないで」というような行動を江藤市会議員は選択するだろう。前号で触れた通り、前回の市長選で江藤氏は、吉田氏の民主党推薦に反対をしていた(実は、助信氏に反発しただけなのだが――)。一体、吉田氏のどこに惚れているのだろうか。実に不可解なり。
<事態打開能力なし>
辣(らつ)腕・助信氏に対して悪寒を走らせていた江藤氏だが、今は自分が力で反対意見をねじ伏せようとしている。民主党福岡市会議員団内にも吉田氏に対する評価は多種多様ある。江藤氏は必死で吉田市長支援体制を固めようとしている。筆者は、権力を盾にしてワンマンぶりを発揮することを批判するのではない。保身のために権力行使をしている情けなさを糾弾しているのだ。「江藤さんよ! 事態を打開するリーダーシップを駆使しろ」と忠告しているのである。
助信氏は、政治家としての自己抑制に問題があり自滅した。だが事態を打開する指導力においては抜群のものがあった。その政治手法に民主党県連内部では各々の議員たちが傍観的に好き嫌いの意志表明をしていただけで手をこまねいていた。
同氏の辣腕が消えた今、民主党の組織力で事態打破に突撃することが求められている。そんな局面にも関わらず、動きの欠片も見られない。若手周辺にパワー溢れる人物が現れても良さそうなのだが見当たらない。
中央の民主党においても然り。すべてが小沢幹事長の指導力に対する好嫌でグループが形成される。筆者は小沢という政治家は賞味期限が切れたとみている。小沢政治家を超えるリーダーが出現してもよいはずなのだが、現れない。「小沢氏以外には民主党をまとめきれる奴はいない」ということでチョンになる。民主党内には、小沢氏から離脱した事態打開能力と統率力を持つ指導者の存在が渇望されている。
地方においても傍若無人の腕力政治家はいらないが、常識を兼ね備えた突破力のある政治家が求められている。福岡市長選において民主党がピエロ役を演じてしまったら、しばらくの間は沈滞化状態に甘んじなければならないだろう。
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