<企業が求めるのは即戦力>
雇用主の側にも変化が起こりました。従来の学歴重視から能力重視に傾いています。激しい競争のなかで企業は、即戦力や実用性のある人材を雇い、確保するからこそ生き残ることができる。そのような価値観の変化によって、人材採用の方針も変わりつつあるのです。大学生であっても企業への貢献度が低ければ、農民工より賃金が安くなります。
その点について「見直すべきは大学生や大学側にある」と指摘する専門家がいます。「(大学教育の)全てが悪いとは言わないが、やはり時代の流れに即して、不足しているところを認識し改善に繋げてほしい」と言うのです。
これまでの大学教育は、専攻を中心に展開しています。専攻を熟達するため、勉強や試験を繰り返す。だが、その専攻は必ずしも将来の仕事を左右しません。大学時代の専攻と卒業後の職業に、全く関係ない場合が多いのです。見知らぬ仕事に茫然としている新入社員を、雇い主はなかなか評価してくれないでしょう。
<就職を前提にした大学教育へ>
有識者は「もし修士課程や博士課程に進学するならば問題ないが、就職を考えるなら、職業を中心に教育を変えたほうがいい」と提言します。いずれ将来の仕事に直面しなければいけないから、大学の段階で仕事に関する心構えをつけたほうがいい。世のなかにどんな仕事があるとか、自分に向く仕事が何であるとか、その仕事に就くのに必要な知識が何であるかなど、この一連の問題を考えながら学習を行なえば、就職の際もっと余裕が生まれるでしょう。雇い主も、きちんと準備を整えた大卒生を正しく評価するはずです。
また、これまでの大学生は社会的な活動にあまり参加していません。参加するにしても、いろんな反対を受けます。「学生は学習に専念すべき」と父母が言い、「社会的な活動が学習の時間を無駄にする」と先生が言い、クラスメートは「折角の学生時代だから、のんびりするべき」と言います。しかし、大学が社会に出る前の最終段階であるからこそ、社会を知る努力をすべきだという声もありました。これまでに家族、親戚、先生、同級生などの知り合いばかりの環境と違い、社会のほとんどは見知らぬ人々から構成されています。社会的な活動を通じ、新たなルールを知り、身につけ、自分の行動を確かめながら調整する必要があるのです。
知識は力となります。農民工が日々の仕事を通じ、経験を積み重ね、知識や技術をマスターすれば大学生に勝ります。同じことは大学生にも言えます。大学生が社会の需要に応えられるような能力を持てば、給料が上がることは言うまでもないでしょう。勝負の鍵は各人の手元にあります。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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