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中小企業の現場から見た経営環境と金融環境
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2010年5月14日 08:00
中村伸一税理士事務所 税理士 中村 伸一 氏

欠損法人申告割合

 今年の3月、国税庁が会社標本調査(2008年度分)を発表しました。税務統計の視点から法人企業の実態が顕されているので、毎年必ず目を通すようにしていますが、今回の調査では、なんと欠損法人割合が70%台を超えてしまいました。
 全国の法人企業259万社(大企業も中小零細企業も含みます)のうち、71.5%の185万社が欠損法人となっています。70%を超えるのは、1951年の調査開始以来初めてだそうです。また、営業収入金額は前年度から9.2%の減少、さらに利益計上法人のみに限った数字で27.0%の減少と過去最悪の数字。
 ただし、この調査では資本金にかかわらずすべての法人企業が調査対象となっていますので、収益力・財務体質の弱い九州の中小零細企業はもっと厳しい経営環境におかれていると思います。

福岡地場企業を襲ったここ数年間での悪化材料

 この厳しい経営環境において、どの企業の社長も身を粉にして頑張っておられます。しかし最近は、企業努力だけでは克服が難しいような経営悪化材料が、福岡の地場企業を襲い続けています。
 08年9月のリーマン・ショックが一番記憶に新しく、また影響も決定的だったのですが、振り返ると、07年冬頃の原油価格の高騰辺りからじわじわと地場中小企業の財務体質が全般的に蝕まれていったような気がします。直接原油を使うような製造業や運送業だけでなく、小売・サービス業などにも間接的な影響が出ました。
 また、建設業などでは公共事業の予算削減と不況による民間工事の減少が大きく響いており、元来倒産の少なかった土木業などにも倒産が続いています。店舗内装業においても、最近に大型商業施設がオープンしましたが、地場内装業者には大きな潤いとはならなかったようです。
 リーマン・ショック以降は、全般的にどの業種も決定的な影響を受けました。しかし、やはり不動産の流通が減速したことによって、福岡に住む人なら誰でも知っているような会社の倒産が残念ながら頻出したことで、福岡の全体的な景況感はさらに悪化したことと思います。

福岡地場企業の実態

 毎日福岡近郊を走り回っている者の実感として、全般的にどの企業も売上が前年比おおよそ3割減の状態です。役員報酬の削減や固定費の圧縮など、どの経営者も損益分岐点の引き下げに取り組んでおられます。しかし、リーマン・ショック以降の売上ダウンは予想を遥かに超えており、また固定費圧縮にも限界があります。前年度まで順調に黒字計上できていた企業が、残念ながら赤字転落してしまうケースが多々見られました。
 逆に、この不況下においても業績を伸ばしている企業も、わずかながら見受けられます。デフレビジネスを生業とする企業と、開業後間もない企業です。
 後者の企業は元来、固定費をあまり持っていないため、単価で老舗企業と渡り合っています。こういう不況下こそ、人間的なつながりや信頼関係、あるいは長年の蓄積における技術力などが重視されそうですが、「モノが良く」しかも「安いモノ」でないと、モノが売れないという悪循環に陥っているような気がします。
 これからの地場企業は、過当な単価競争のなかで「いかに収益を残していくか」を考えなければなりません。一部報道では景況判断などに景気回復の兆しが伝えられていますが、福岡に限って言うと、まだまだ厳しい経営環境が続くと考えています。

セーフティネットとモラトリアム法案

 昨年12月、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法案)が成立しましたが、それが金融機関に対する努力義務であったことから、当初は懐疑的に認識していました。現在のところ、弊社に申請企業はありませんが、伝え聞くところでは地場銀行からは概ね良好な回答が返ってきているようです。福岡の地場主要行が、リレーションシップバンキングに積極的だったことも関係しているかもしれません。
 しかし、むしろ地場中小企業にとって救いの慈雨となったのは、セーフティネット貸付の方だと思います。08年10月あたりだったと記憶していますが、麻生政権の下でセーフティネット貸付を大幅に強化拡充しました。その後も拡充は徐々に行なわれ、今年に入ってからは医療系の企業にも門戸が開かれました。
 銀行の融資姿勢が「まず保証協会ありき」なのは、10数年前に私が銀行員だった頃から変わっていません。しかし、最近の「まずセーフティネットありき」の姿勢は、少し気になりますが...。

中小企業金融円滑化法

今、税理士として何ができるか

 現在、中小企業の経営は、本当に難しいと思います。「ギリギリ」の線で頑張っておられる企業がほとんどです。私が福岡の税理士業界でお世話になって丸10年になりますが、間違いなく去年と今年が最も経営環境の悪化が著しいです。そういう状況のなかで、税理士として今何ができるかを常に考えながら、毎日を過ごしています。企業の3要素は「ヒト」「モノ」「カネ」と言いますが、「カネ」の分野だけでなく、「ヒト」や「モノ」の分野でもどんどんご相談にあずかりたいと思います。
 すべての税理士が、顧問先企業の繁栄と安定を願っています。経営者にとって一番身近な相談相手であり、一番の応援団が税理士です。「一番身近な応援団」を、もっと有効に活用していただければと思います。


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