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連帯保証人に潜むリスク なる前に必要な覚悟
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2010年5月17日 08:00
経営法律事務所北斗 代表弁護士 田畠 光一 氏

保証人は必須?

 一口に保証人と言っても、ご存じのとおり、さまざまな種類があります。家や部屋を借りるときの連帯保証人や、親御さんが子どもの就職時に身元保証人となる場合も、民法上、一定の責任が生じることはよく理解されていると思います。
 もっとも、経営者の誰もがよくご存じなのが、お金を借りるときの保証人でしょう。友人の経営者から頼まれ、やむを得ず連帯保証人になっているという方も少なくないかもしれません。連帯保証人になったばかりに、自社まで潰すことになってしまったという話もよく聞かれることがあると思います。
 では、この保証人はお金を貸すときに、しかもビジネスとしてお金を貸すときに、必要なものなのでしょうか。
 そもそもの原理に立ち返ってみますと、皆さんが設立した会社、これは、個人からビジネス(事業)上のリスクを切り離すために考え出された、法的な道具です。個人とは別の法人格を作って、その法人が事業をなす。したがって、そこで生じるリスクとリターンは、いったんはその法人がすべて受け止めることになります。
 だとすれば、いったん切り離した法人がお金を借りるときに、運転手である代表者が保証人になってしまったら、「何のために法人にしたのか?」という話になってしまいます。もちろん、お金を借りる以外にも法人にするメリットはあるのですが、少なくとも融資を受けるという1点では、現状、保証人が必要となるのであれば、会社にする意味はないということに変わりありません。
 しかし、本来ならば、これはおかしなことです。我々が融資を受ける企業(銀行など)は、いわば融資のプロ。事業そのもののリスクと成功可能性を鑑みて、融資額と金利を設定すればいいはずで、そのような分析もせず(できず?)、「土地(担保)と保証人がいれば、貸せますよ」というのでは、市場でお金を回す資格はないと言わざるを得ません。
 ちょっと、言葉がきつくなりましたが、日本ではビジネスではなく人に貸していたというところが多く、それがハイリスク・ハイリターンを目指す企業が出てこない、ベンチャーが育たない要因の一つになっていると思います。
 もっとも、最近は連帯保証人が不要という融資も増えてきているようですので、事業内容に自信のある方は、ぜひ保証人なしでの融資にチャレンジしてもらいたいと思います。

保証人の責任

 ここでは、連帯保証人の法的な責任について、整理しておきたいと思います。
 皆さんもよくご存じかと思いますが、連帯保証人には、通常の保証人にはある催告の抗弁(先に主債務者に請求してくださいという権利)と、検索の抗弁(先に主債務者の財産を差し押さえしてくださいという権利)がありません。さらに、連帯保証人が複数いても、分別の利益(保証人の頭割で、「自分の分だけ払えばいいでしょ」と言える権利)もありません。
 つまり、自分では使わないお金を自分で借りたのと同じ状態になるのです。貸す方からすれば、こんなに安心なことはありませんよね。連帯保証人がなくならないわけです。
 さらに、主債務者が破産等の法的整理に入ったとしても、それは主債務者だけの話ですから、連帯保証していた債権はまったく消えてくれません。したがって、自分でも払えなければ、破産を視野に入れないといけなくなることもあります(この点については、最後にまた述べます)。
 これに、根保証が加わると、さらに大変になります。とくに包括根保証といって、主債務者が継続的に行なう取引から発生する債務を、無制限に保証する方法もあります。それになってしまうと、もはや「主債務者の代わりに自分が事業をした方が、絶対後悔しないと思いますよ」とアドバイスするほかありません。
 以上のとおり、連帯保証人の責任は過重になりやすく、とくに根保証については社会問題化したところもありましたので、保証契約については書面によること、個人の包括根保証は撤廃されるという民法の改正が行なわれています。
 現在では、さらに保証人保護を拡充する観点からの改正の議論が、引き続きなされているところです。

連帯保証人になったら
連帯保証人
 ここまで述べてきたとおり、連帯保証人になるということは、自分で借りるのと同じことです。自分で使えないお金を借りる人はいないでしょうから、ならないのが一番だということになります。
 とはいえ、現実にはなかなか難しい面があるのは、ご相談に来られる経営者の方々からよく聞かされているところです。では、どうすればいいのでしょうか。
 まずは、主債務者の状況を正確に聞き取り、借り入れるべきお金かどうか判断させましょう。借りても返せないことが分かっているなら、その時点でその乗り物(会社)は乗り続けるべきではありません。再チャレンジのための借入に保証してあげた方が、よっぽどましではないでしょうか。
 次に、なんとか返せそうだということであれば、経営改革を一緒に行なってください。気持ちとしては共同経営者になるくらいでないと、自分にお鉢が回ってきてしまいます。また、主債務者が知り合いの会社だが、連帯保証人が自社ではなく、代表者などの個人を求められたというような場合には、万一のときに自社で債務引き受けができるか、税務上の処理ができるかは確認しておいてください。会社にお金があっても、代表者が破産しなければいけなくなっては意味がありません。
 最後に、それでも連帯保証人になり、自分に請求がきてしまったら...。あきらめるのはまだ早いです。債権者を確認し、交渉をしてください。債権者によっては、相当程度の減額や長期分割に応じてくれるところもあります。
 そもそも、主債務者の能力を見極めるべき立場である融資のプロの彼らが見誤ったものを、なぜ自分がすべて尻ぬぐいしないといけないのでしょうか。この反論(法的には無意味な道義論ですが、交渉事は、法的な問題だけがテーブルに乗るわけではありませんよね)に対して、納得できる説明を返してくれた担当者さんに私はまだ会ったことがありません。ですから、粘り強く交渉すれば、光が差すこともあるでしょう。破産等を考えるのはそれからでも遅くありません。


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