前回までの連載でビタミン13種類:脂溶性ビタミン4種類;A、D、E、K、水溶性ビタミン9種類;B1、 B2、B6、B12、葉酸、ビオチン、ナイアシン、パントテン酸、C、については一通りの解説をした。世界的にビタミンとして認識されているのがこの13種類だが、ビタミンの定義に合致しないビタミン様作用因子として下記のような物質がある。
1.ユビキノン(コエンザイムQ:CoQ10))
ユビキノンは細胞の中のミトコンドリアでエネルギーの産生に働く物質で、微生物からヒトのような高等動物までのあらゆる生物に普遍的に存在している。脂溶性で細胞膜に存在し、抗酸化作用を発揮しビタミンEを節約する効果が注目される。この物質は日本において、10年前まではうっ血性心不全や狭心症の治療薬であったが、2001年に医薬品から食品へその区分が変わり、現在はコエンザイムQ10としてサプリメントや化粧品に広く使われている。
2.フラボノイド(ビタミンP)
ビタミンCを発見したハンガリーのセント・ギオルギーが1936年にレモンなどから分離した物質で毛細血管の透過性(Permiability)を抑える働きがあることから、頭文字をとってビタミンPと命名した。しかし、その後ビタミンPは、ヘスペリジン、ルチン、ケルセチンなどのフラボノイドの混合物であることが明らかになった。水溶性の物質で血液中にビタミンCと共に溶け込み、動脈硬化を防ぎ抗酸化作用の働きも期待される。みかん等の柑橘類に多く含まれる。
3.イノシトール
動物の脂肪肝を防止する働きがあり、ネズミでは体重低下と無毛症がみられるが、ほとんどの哺乳動物ではイノシトールは体内で合成される。ヒトでは「抗脂肪肝ビタミン様物質」ともいえるので、肝臓に脂肪がたまらないようにする働きがある。コレステロールの流れをよくするので動脈硬化の予防も期待できる。
4.ビタミンU
1950年にアメリカのチェニーは、モルモットにできた胃潰瘍をキャベツ等の野菜汁に含まれる熱不安定因子によって治癒することを証明し、その因子をビタミンUと命名した。その後の研究でこの因子は、s-メチルメチオニンスルフォニウムと判明した。ビタミンUとされたこの因子が生命活動を維持する生理作用というより薬理効果であるため、現在はビタミンとしては認められていない。
(つづく)
<プロフィール>
伊藤 仁(いとう ひとし)
1966年に早稲田大学を卒業後、ビタミンのパイオニアで世界最大のビタミンメーカーRoche(ロシュ)社(本社:スイス)日本法人、日本ロシュ(株)に就職。「ビタミン広報センター」の創設・運営に関わる。01年から06年まで(財)日本健康・栄養食品協会に在籍。その間、健康食品部でJHFAマークの規格基準の設定業務に携わる。栄養食品部長を最後に退任。
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