産学官連携 特別座談会
2007年、九州の地で全国でも初めてとなる機能性食品・健康食品に特化したバイオクラスター計画が産声を上げた。九州地域バイオクラスター推進協議会の下、九州全域から大学、研究機関、原料メーカー、販売会社など177社・団体が参加する堂々の産官学プロジェクトだ。研究・開発から販路開拓支援まで、一連の商流をカバーする一大プロジェクトとして関係者の注目を集めている。09年には、一番食品(株)(福岡県飯塚市)による『発酵黒八女茶』や(株)阿蘇ファームランド(熊本県南阿蘇村)による『どぎゃん』など、産学官マッチングによる商品化も果たしている。事業自立化の年となる3年目の今年、同プロジェクトに新たな課題も浮上した。九州経済産業局をはじめ同協議会の各部会を代表するメンバーを招き、これまでの足跡を振り返りながら将来展望を考えた。
バイオクラスター協議会のロゴマークを付与
――バイオクラスター計画に対してそれぞれが抱いていらっしゃる課題、そして期待とはどのようなものでしょうか。
秋本 それぞれにメリットを感じていただいているからこそ入会していただいているのでしょうが、そもそもの目的が産業振興と地域の活性化ですから、産業クラスターにそれぞれの会員企業が集まっていただいて、さらに高いメリットを感じていただける事業というものを考えながら毎年変化を加えて展開してきました。最終的には、いかに自立化するかというのが課題かと思っています。
継続のためにはお金が必要になりますので、会員を増やすことによって会員企業と共に収益を生み出すような形の組織になってもらいたいですし、同時に地域の発展に寄与できればと考えます。
また個人的な見解として、バイオというなかで創薬との関係は少し難しいのですが、互いが相関するようなものを作りあげられないかと考えているところです。
農 近々の課題は、参加していただいている会員の方々に、どのようにメリットを与えていくかという点でまだじゅうぶんに機能していない点があると感じていることです。打開策の1つとして、バイオクラスターのなかで商品化されたものについて、推進協議会のロゴマークを表示することで他商品との差別化を行なう、もしくはプライオリティというか優位性を出していこうと考えております。そのあたりが前回の企画運営委員会で絞り込むことができましたから、来年度からはそういう動きが出てくるのではないでしょうか。実際には走りながら考えていかなければならない部分がありまして、現在の会員の方がいくらかでもメリットを感じられるような方向を打ち出していかないと、長続きしていかないという気はしています。
もちろんその過程では、企画運営委員会のなかで認証制度の問題などについても議論はありましたが、まだ任意団体ということもあって、そこまで実現できる力もありません。
今少し実績を積んで力をつけていく過程で、エビデンスのはっきりしている商品に関しては、先々はサポートしていくことも考えていますし、それを使うことで協議会自体の収入源にしていくことも考えなければならない内容だと思っています。
活動の中核になっておられるのが、深見先生をはじめとしたクラスターマネージャーの方々ですから、みなさんが動きやすいようにしっかりした枠組みをつくることでスピーディーに動けるようにしていかなければならないと考えています。
またもう1つ違う視点でいきますと、先ほど産業振興という話がありましたけれども、つい最近、八女の企業の方々とお会いしました。彼らはアグリバイオという事業で若い人たちが中心となってもっと地元の農産物の付加価値を上げようという試みをされているのですが、そのような人たちともう少し一緒にやっていけるような仕組みを作ることができれば地域振興にもつながっていくのではないかという気がします。付加価値を高めるということになれば企業だけではなかなか難しいので、大学との産学連携というのは重要な要素になってまいりますから、地域おこし的な連携もおもしろいのではないかと思います。現状ではなかなかそこまで手を広げられない状況ではありますが、彼らはバイオクラスターにも興味を抱いており、むしろ間をつないでほしいといっておりますから、そういう動きと一緒になっていけば特色も出てくるのではないでしょうか。
――協議会のロゴマークの使用はすでに決定されているのでしょうか。
農 まだ原案ができたという段階で、次回の総会に諮られる予定です。
秋本 企画運営委員会では前向きに検討されております。
宮房 私ども企業の立場といたしましては、そういうマークがあればいいなという気持です。共同開発した商品が消費者にどのように伝わるかと考えたばあいに、どのていどの文言で表示すべきかどうかなど、責任と評価をどうバランスをとるかという点が問題として残るとは考えますが。
深見 クラスターが今後自立する手段の一つとしては有効でしょうし、クラスターの成果をまずは形にすることで、会員のみなさんのモチベーションの高まりにつなげることができるのではないでしょうか。
秋本 基本的には、当局でもなんとか表示できないかと検討してきたものですが、あくまで協議会の支援により開発したという点に力点を置くものでして、特定の商品の品質を保証するというのとは違いますから、たとえば「(必ずしも)品質を保証するものではありません」というようなネガティブ表示を行なうことで消費者等の誤解を防げるのかなと考えております。
農 今回はあくまで、商品開発を支援したというマークにしようというレベルです。
――すでに広島大学では、民間企業と共同開発した商品に推奨ロゴマークを記載する試みがあります。崇城大学では民間との共同開発商品もございますが、大学の推奨ロゴマークを付した商品などはあるのでしょうか。
岩原 そういうものはありません。大学研究室のデータを販促用に使用しているという例はあるかもしれませんが、却って教授に断りもなく使用しているばあいもあるらしいですね(笑)。そのへんは程度の問題でしょうけれども――。
<出席者> | |
九州経済産業局 地域経済部製造産業課 次世代・基盤産業担当参事官 秋本郁夫氏 |
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九州地域バイオクラスター推進協議会 企画運営委員会委員長 /オーム乳業(株)専務取締役 農新介氏 |
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九州地域バイオクラスター推進協議会 マーケティング部会副委員長 /一番食品(株)企画部部長 兼 通信販売事業部長 宮房伸博氏 |
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九州地域バイオクラスター推進協議会 人材育成関係部会企画運営副委員長/崇城大学 特任教授・農学博士 岩原正宜氏 | |
九州地域バイオクラスター推進協議会 クラスターマネージャー /九州大学 知的財産本部 特任教授・農学博士 深見克哉氏 |
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