ベストアメニティ（株）　代表取締役社長　内田　弘　氏

ロケ中に変化する問題意識

　--環境映画「KIZUKI」の原点はそこなのですね。

　内田　環境にテーマを置いた映画を製作したいという日頃からの思いが、瀬木直貴監督とのタイムリーな出会いによって結実したのがこの映画でした。
　「環境問題への取り組みにはいろいろな切り口がありますが、結論として次世代への命のバトンタッチがアプローチの基準だと気づいた」という瀬木監督の考えにまったく同感です。
　映画は、北九州で暮らす10歳の少年を中心に据えたメインストーリーと３つのサブストーリーで構成されるもので、ある日、亡き祖父と交わした約束を思い出した少年が祖父の遺言を守るために南の島に向けて一人旅に出ます。旅の途中で起こるさまざまなエピソードを縦軸にして、コンビニエンスストアでエコ商品を売るために奔走する企画部女子社員や、森の清掃活動に従事しながら不法投棄と戦う女優、リゾート開発と地球温暖化に苦悩するサンゴ研究者の物語を横軸として、観る人に多くの「気づき」を与えながら展開するというストーリーです。
　キャストの鶴見辰吾さんや峰岸徹さん、遠藤久美子さんらはもちろんのこと、主役に選ばれた当時小学４年生の中村大地君やスタッフまでが、撮影が進むにつれて環境問題への意識が変わっていくのですね。このようにスクリーンの外でも刻々と変化していく姿を見守るのが楽しみでした。
　結果として、この映画を観ていただいた1人の方が知り合いの10人の方に「気づき」を与えてくだされば、次には100人を超えることになります。そして少なくとも、この映画にご賛同いただいた10万人が10人に気づきを与えることができれば100万人になるわけです。100万人が５人に、500万人が２人に伝えることで地球を救う1,000万人の力が結集できるのです。
　おととし北海道で開催された洞爺湖サミットでの試写会を皮切りに、各地で上映しています。賛同者はまだまだ10万人に届きませんが、昨年11月にはインド映画祭CMS VATABARAN2009（野生生物と環境に関する国際映画祭）に出品して入選を果たすなど少しずつ広がっています。企業研修や環境問題の勉強会などを通じて上映機会は増えています。

　--今後の抱負についてお聞かせください。

　内田　熊本県阿蘇郡の小国町に20ヘクタールの自社農場がありますが、それを２年後に30ヘクタールに広げます。北海道にも100ヘクタールの土地を確保していますので、北海道農場として自社農場の経営を計画しています。
　契約農家が作りづらいもの、また、試験的な耕作を行なうばあいには、自社農場を持っていないとできないからです。試験的といっても、ある程度の規模をつくらなければわかりませんから。
　地域のみなさんと一緒にやっていくためのモデル農場として、契約農家さんとの取引量を減らすのではなく、それはそのままで、どうしても作りづらいとか、契約農家では割に合わないとかいうものについて自社で作ろうという試みです。
　九州でよく取れるものが北海道ではどうなのかというふうに、今あるものを試験的にやる。違った気候や土壌で、それに見合った種子を見つけて、地域の人たちと一緒に作っていくというのが試験的農場でやりたいことです。
　これからは雑穀だけではなく、野菜もやっていきたい。皆さんがびっくりするような独自の野菜も作る予定があります。また、弊社の裏にある「小さなゆずり葉」のような、レストランではなく、こだわり商品を置いた店を出していきたいと思っています。
　私たちは、2003年から10年間で、わが国の食料自給率を50％に上げようという「031350運動」を推進しています。食の安全を守るという視点だけでなく、おいしく健康的な食物を毎日届けてくれる農家の方々を守るためにも、自給率の問題は真剣に考えなければならない根本のテーマではないでしょうか。

　--ありがとうございました。

（了）

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