上場不動産会社の倒産はここ最近なりを潜めていたが、5月6日にコマーシャル・アールイー(CRE)が、さらに同14日にはプロパストが民事再生法の適用を申請した。ただ、2008~09年にかけて起こった不動産会社倒産ラッシュを経験しているせいか、市場関係者の受け止め方は冷静だった。こうした環境にあって、何とか生き延びている上場不動産大手のダヴィンチ・ホールディングスとケネディクスだが、両社の力の差が浮き彫りになってきた。
淘汰から再編へ
そもそも日本の不動産業界で淘汰が始まったきっかけは、2007年6月20日に施行された改正建築基準法だった。新設住宅着工戸数は同年までの数年間、景気が回復していたこともあり、ほぼ安定してその数を伸ばしていた。しかし、法施行後の同9月には44%減と過去最大の減少幅を記録。建設・不動産業界に大きな傷跡を残した。そして、時を同じくして生じたサブプライムローン問題。当初は「日本への影響は軽微」とする対岸の火事的な論調がまかり通っていた。今にして思えば、馬鹿げているというか常軌を逸しているが、たしかに楽観的な専門家も結構いた。
しかし、08年に入る頃には外資系レンダーが戦線から離脱し、外資系証券会社からのノンリコースローン(NRL)も急停止。ダヴィンチやケネディクスなどの不動産ファンドの拡大=不動産バブルを支えていた米国型の金融システムが崩壊し、とくに投資系の新興不動産企業の倒産が相次いだ。NRLの出口だったCMBS(商業用不動産ローン担保証券)市場で買い手が縮小するなど混乱が続き、大手財閥系を除く不動産業者は軒並み苦境に立たされた。
上場企業の倒産は、それまで02年の29社が最高だったが、08年の倒産件数は33社で戦後最高の件数となった。そのうち、不動産業者だけで負債総額は1兆円を超え、その他の業種と合わせた累計の約7割を占めた。もっとも額が大きくインパクトがあったのはアーバン・コーポレイションの2,558億円だが、ニューシティレジデンス投資法人によるJ-REIT初の倒産(負債総額1,123億円)で、J-REIT全体の株価が急激に下がったのも印象深かった。
09年は20社にとどまったものの、ダヴィンチやケネディクスと肩を並べる存在だったパシフィック・ホールディングスが負債総額1,636億円で倒産。その後、ケネディクスがスポンサーにつくなど、かつての構図は大きく変化し、新興不動産業界のなかでも優劣がはっきりとしてきた。
【大根田康介】
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