(株)マキオ
(株)マキオの2010年2月期売上高はおよそ200億円が見込まれる。約50億円の増収は09年3月に出店した「はやと店」の効果が大きい。しかし、注 目すべきは、既存店の業績が上向いていることだ。小売業界が軒並み苦戦を強いられるなかで快進撃を繰り広げる同社の秘訣を探る。
品揃えの基本は生活必需品
36万点を超える商品構成。およそ280点の醤油は有名だが、全商品で同様の品揃えをしている訳ではない。最も分厚い陣容を強いているのは「スモール」商品だ。スモール商品とは小さな商品、つまり単価の低い商品という意味がある。ただ、単に安くて小さいということではなく、日々の生活に欠かすことのできない生活必需品ということだ。ものによっては、見た目が大きくてもスモール商品となる。その典型的なものが、地方に欠かすことのできない足となっている小型車・軽自動車で、圧巻の品揃えを誇る。
次に多いのが「ミドル」商品。日々の生活には必ずしも必要ではないが、あれば便利なもの。レジャー用品や園芸用品が含まれる。日々の生活にはあまり必要でない「ラージ」商品の品ぞろえは、実は薄い。高級車やブランドバッグなどは扱っていない。
牧尾氏が現在の業態による出店を思い立ったのは、実際の出店(97年)の10年以上前である。日本はバブル前夜の熱気に満ちていた。そうしたなか、過疎化に直面する鹿児島県阿久根市にあって、牧尾氏は今日の大不況を予見していた。店舗の大型化は、大量生産・大量販売・大量消費が前提ではなく、生活者のニーズを汲みとるため生活物価を引き下げることを目的とした。景気が後退すれば、高級品・嗜好品への意識も減退する。消費者が守りに入れば入るほど、生活サポートに徹するA-Zの売上が伸びるのは当然だろう。
前例否定のローコスト経営
出店前に「過疎地の阿久根では経営できない」と言われたA-Zだが、成功すると「阿久根だからこそできる」という声が聞かれるようになった。田舎は経費、とりわけ人件費を抑えられるという考えからである。牧尾氏自身が「ローコスト経営は生命線」と指摘する。自社不動産を安く取得できるメリットは大きい。電気・水道代などのランニングコストも都会より安い。燃料が安い時期には、自家発電の取り組みも行なった。
そして人件費。採用に苦戦したA-Zを支えているのは素人集団、近所のおじちゃん、おばちゃん、お兄さん、お姉さんである。人件費は安く抑えているが、決して給料が安い訳ではない。A-Zは「人件費は安く、給料は周囲平均より高くできる」構造となっている。店舗の成功は前例を否定することで生み出されてきた。A-Zは組織が縦割りにはなっていない。1人の役割は仕入から販売まで多岐にわたる。広範囲のエリア・業務のカバーができる。「足りないところにサポートで入る」ことが自然になされる。A-Zにおいて、従業員1人あたりの担当する売り場面積は30~50坪だ。一般的の小売店では10~15坪、広いところでも20坪と言われている。
教育費にもコストをかけない。マニュアルに縛られず、「毎日の業務・生活」からいろいろなことを学んでもらう。顧客、関係業者、家族といったさまざまな声に耳を傾けることで成長してもらう。
A-Zでは、従業員同士が家族のような関係を構築している。しかも、顧客とも同様の関係を共有する。いわば、「お客さまが自分の店だと思っている」のだ。店内では、売り場が分からない顧客を別の顧客が案内する行為がしばしば見受けられる。時折舞い込む激しいクレームに対しても、「そこまで言わなくても良い問題」とか「それはあなたが悪い」と顧客が顧客を説得、注意してくれる。
【鹿島 譲二】
(株)マキオ
代 表:牧尾 英二
所在地:鹿児島県阿久根市赤瀬川2210
設 立:1985年12月
資本金:3億4,400万円
年 商:(09/2)148億円
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