明暗を分けたもの
去年の金融危機以降、とくに新興不動産業界の地図は大きく変化した。かつては「ケチなケネディクス」「アグレッシブなダヴィンチ」と業界内で評されていたようだが、結局は独立系ファンドではケネディクスやセキュアード・キャピタル・ジャパンあたりが何とか生き残りそうだ。
かつてよく比較されていた、ダヴィンチとケネディクスの明暗を分けたものは何か。
まず、客観的に大きく違うのは組織力の差。ダヴィンチは、私募ファンド黎明期から駒を張り続け「黒目のハゲタカ」の異名を持つ金子修氏のカリスマ性と天才的な投資能力によって支えられてきた面が大きい。一方のケネディクスは、もともと米国不動産会社のケネディ・ウィルソン・インクの子会社で、カリスマ社長が組織を引っ張るというわけではなく、どちらかというと地道に運用資産を増やしていったイメージがある。
両社の違いは、リスクをとる度合いにも表れている。たとえば、ダヴィンチが香港に本社を持つ通信系企業パシフィック・センチュリーグループから2,000億円で購入した「パシフィック・センチュリー・プレイス丸の内」。09年12月15日にセキュアード・キャピタル・ジャパンが約1,400億円でダヴィンチから購入し、09年最大の不動産取引額として話題に上ったが、06年9月にダヴィンチが取得したときの実質利回りは3.5%台だったと見られている。だが、ケネディクスは「こうした物件でもキャップレート(期待利回り)が5%なければ買わないという姿勢を貫いていた」(同社担当者)という。
そんな同社が競合相手として見ているのは、財閥系の不動産投資会社。同社担当者によれば、「彼らとの差異をどう出していくか。どちらかといえば、財閥系はそれなりに資金力がある顧客しか持てないが、こちらはそうした制約はない。2010年1月~3月は海外の投資欲が旺盛化している。09年は、海外投資家はどちらかといえば投資で生じるリスクを負うことを避けていたが、10年になると、むしろ投資をしないことで生じる機会損失のリスクへの意識が強まった。そんな海外の投資家の受け皿となりたい」とアグレッシブな姿勢への転換をほのめかせる。
取材過程でも「一般論は話せるが、個別のことはお話しできない」と自身のことについては一切語ろうとしないダヴィンチ。かたや冷静に両社の違いを分析しているケネディクス。ある業界関係者が「ダヴィンチは何を聞いても答えてくれない。代わりにケネディクスにダヴィンチのことを聞いている」と語るところに、両社の明暗の差を感じた。
【大根田康介】
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