現在の日本人の3大死亡原因はガン・心筋梗塞・脳卒中であり、特にガンは1981年に死亡原因の1位になってから既に30年、3人に1人がガンで死亡する。
これらの疾病以外でも、例えば糖尿病の患者と予備軍の人数は2,210万人とされる。
これらの病気は生活習慣病と呼ばれている。私達が日常の生活、特に食べ物に関してもっと神経を使い、正しい栄養情報を持って、きちんとした食生活を進めていけばこれらの生活習慣病が確実に減少していくのではないかと考える。この考え方を学問的に証明するのが疫学研究である。この分野で先駆的な2つの研究業績を紹介する。
廣畑富雄(九州大学)が1960年~1970年にかけて実施した日本人、ハワイ移住日系人、そしてハワイ在住白人での胃ガンと大腸ガンの標準化死亡率を表にしてある。
廣畑の指摘は以下の通りである。ハワイへ移住した日系人は、移住当初は胃がんの発生も非常に高率であったが、1970年までの50年間にその死亡率は3分の1以下に減少した。その大きな要因は移住した日系人が焼き魚、塩干魚、漬物などを食べなくなったことと、生野菜、果物、牛乳などを多く摂取するようになったことだとしている。
大腸ガンについては、1970年当時、日本人の肉類を食する頻度と量は、ハワイ移住日系人やハワイ在住白人と比して相当に少なかった。すなわち、高脂肪、高コレステロール、高タンパクな肉を食することによって、食物の腸内通過時間が長くなることで腸内細菌叢が影響されて嫌気性菌が増殖し発がん物質の生成を促進するのではないかと推測される。
(つづく)
<プロフィール>
伊藤 仁(いとう ひとし)
1966年に早稲田大学を卒業後、ビタミンのパイオニアで世界最大のビタミンメーカーRoche(ロシュ)社(本社:スイス)日本法人、日本ロシュ(株)に就職。「ビタミン広報センター」の創設・運営に関わる。01年から06年まで(財)日本健康・栄養食品協会に在籍。その間、健康食品部でJHFAマークの規格基準の設定業務に携わる。栄養食品部長を最後に退任。
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