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上海最先端レポート

厳しい取り締りの抜け穴(上)~日本人が知らない中国事情(22)
上海最先端レポート
2010年5月25日 11:46
劉 剛

 2010年4月中旬、「一部の都市における急激な物件価格の上昇を強く抑える」ため、中央政府が史上最も厳しい取り締まり策を打ち出しました。それから1カ月以上が経ち、物件の成約数は大幅に減少しています。「今後、不動産価格の成り行きを見守る」雰囲気が感じられます。そんな冷え込みのなか、市場関係で新しい動きが浮上しています。

<苦しい地方政府の立場>

 地方政府は今の時期、微妙な立場に立たされました。中央政府の方針、政策を貫かなければいけない一方、地元の発展や建設に責任を持って努力しなければいけない。今回の不動産業界に対する取り締りに直面し、中央政府が言う通りに不動産業界を厳しく取り締まれば、ある意味で、地方政府が自分で自らの首を引き締めることになります。不動産業界への土地(使用権)売却収入や物件売買にかかる税金が地方財政の3から5割を占めるのは現実ですから。もし、それを理由にして中央政府を軽視すると、今の行政体制では、地方政府のトップが免職処分されることまで考えられます。

 どうすれば中央政府との間でバランスを取れるのか。中央政府への面子を保ちながら、地方経済への影響を最小限に止めるには、地方の行政責任者の知恵が問われます。そこで、地方政府がいろいろと工夫をしてきました。上海の状況を例にして見ましょう。

 上海市では、まず、中央政府の政策を断固として擁護し、決意あるいは原則的な方針を表明していますが、その具体策を避けるように、発表を遅らせています。「上海の住宅は居住主要、市民消費主要、普通商品住宅主要」とは、上海市長の発言です。いわゆる「三主要」。これは全国どこに行っても適応する話です。しかしながら、具体策については、もう1カ月以上過ぎたにも関わらず、いまだに「検討中」としています。

上海のビル群 次に、具体策を出さないうちに、土地(使用権)売却が加速しています。上海市企画と土地管理局の公表データによると、5月までに、市の土地売却収入が650億人民元を超え、すでに2009年全体の数字に迫っています。さらに、5月18から25日までに、集中して数多くの土地を出す計画です。この分を確保できれば、市政府の財政収入についてはひと安心といったところでしょう。今年、上海万博開催に際して、市政府が大金を投入したことを考えれば、この行動はある程度やむを得ないと言えます。

 そして、上海の住宅成約時の平均価格を抑えるために、新築高値物件の販売許可を出さないようにしています。ある不動産コンサルティング会社のレポートによると、中央政府の取り締まり策が発表されて以来、上海では数週連続で単価4万元/m2以上の物件供給がゼロになっているが分かりました。また、上海市住宅局のHPでは、5月に販売が許可された物件がほぼ郊外ばかりで、市内中心部の高級マンションがひとつも見当たりません。都心部から遠ければ遠いほど、物件価格は安くなります。

 そのほか、既存の高値物件につき販売が成立しても成約登録をさせないなど。上海で成約済みの物件は登録する必要があり、登録しなければ統計に入りません。そうして、平均価格に影響を与えないように"心がけている"のです。
しかしながら、上海市政府が精一杯努力したにも関わらず、取り締まり策発表から1カ月経った今、住宅の平均価格が6.97%値上がりしました。

(つづく)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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