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上海最先端レポート

厳しい取り締りの抜け穴(下)~日本人が知らない中国事情(23)
上海最先端レポート
2010年5月26日 08:00
劉 剛

  物件価格上昇を抑制するための厳しい取り締りに対する市場の新たな動きについて、今度は市民の側から見てみましょう。

<いかにして優遇を受けるか>

 どんなに厳しく取り締まりされても、さまざまな理由で物件を買う庶民がいます。今回の取り締まり策の焦点となるのは、購入するのが1軒目か2軒目かという点です。
 1軒目であれば、頭金30%でローン金利は基準の約0.85倍です。しかし、2軒目であれば、頭金が少なくとも50%以上、ローン金利は基準の約1.1倍になります。
上海のビル群 そして、ここが重要なポイントですが「1軒目と2軒目を判定する際は、家庭を単位に判定する」となっています。
 そこで、市民からは、家庭という単位を中心に考えたすえ、いろいろな案が出されてきました。要は「ひとつの家庭でなければ、実質2軒目を購入する際でも『1軒目の優遇策』の対象になる」ということです。その案は大体ふたつに区分できます。

 ひとつは未婚者の場合です。物件購入の際、未婚、または未婚のように見えるようにします。具体策は次の3つです。双方がひとつずつ物件を購入してから結婚します。ただし、結果的に、しばらく結婚が延期されます。また、結婚しても、登録届出を当面の間、出さない方法もあります。いわゆる「無証結婚」です。そして、2軒目のマンションを購入してから登録します。片方が地方の戸籍であれば、その地方で結婚の登録をすれば、実際に住む都市で『1軒目の優遇策』の対象になることもできます。地方政府間の情報共有化が進んでいないためです。

 上海市民政局婚姻管理処によると、5月半ばまでに今年の結婚登録数が去年同期に比べて5.8%下落していることが分かりました。数年間ずっと、毎年の結婚数が増える傾向であったことからすれば、異常と思われます。「多くの社会要因があるなか、今回の不動産取り締り策からの触媒作用もある」とある専門家は分析しています。

 そして、もうひとつは既婚者の場合です。中国の小中学校は戸籍に即しています。多くの親たちは子供がいい学校に入学させるためには、希望する学校の周辺に新たな物件を買わなければいけないこともあります。しかし、今回の新政策に従って、2軒目の購入と判定されれば、ローン金利だけでも、かなりの負担増になります。

 たとえば、北京で90m2のマンションを購入する場合、0.85倍と1.1倍のローン金利では、30年間の返済で30から40万元の利子差がつきます。これは一般のサラリーマン家庭にとって、十数年の貯金に匹敵します。
 そこで、やむを得ず一旦離婚し、2家庭となります。そして、マンションを所持しない方がもう1軒の物件を買うのです。それから、改めて結婚手続きをします。
 北京朝陽区の結婚登録処のスタッフによると、5月に入り、離婚件数が例年より増え、しかも30から40代の夫婦が多いそうです。当然、全てがマンションを買うためとは言えませんが、要因のひとつに考えられます。

 以上のように、地方政府から個人購入者まで、さまざまな対応策を取っています。その一方で、「中央政府の取り締まり策の効果が期待通りに出ないと、もっと厳しい政策を打ち出される」という懸念の声も上がりつつあります。

(了)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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