福岡県が5,000万円以上の公共工事の入札で行っている「総合評価方式」に、信頼性を揺るがす大きな疑問が浮上している。
国土交通省が導入を推進してきた「総合評価方式」は、「価格と品質を数値化した『評価値』の最も高いものを落札者とすることにより、『価格』と『品質』が総合的に優れた施工者を選定する方式」(国交省公表文書より)。
福岡県は、平成19年度から5,000万円以上の公共工事入札について「総合評価方式」を採用している。県の「福岡県建設工事総合評価方式実施要領」によれば、標準点に技術評価における評価項目ごとの得点の合計点である加算点を加えたもの(以下「技術評価点」という)を、応札者の入札価格で除して得られた評価値をもって落札者を決めるものだ。
技術的な工夫の余地が小さい工事における「簡易型」と、技術的な工夫の余地が大きい工事における「標準型」がある。
福岡県の総合評価で問題視されるのは、落札者決定までの過程で、県所管の外郭団体が重要な業務を請け負っている点だ。
県は総合評価における資料作成、データの集計など事務的な役割をはじめ、大半の実務を「財団法人 福岡県建設技術情報センター」に業務委託しているのである。これは情報管理上、大きな問題があるといえる。
同法人は、建設業に従事する人材の確保、育成、技能の向上を図るための各種研修や、資材の品質管理や新技術を用いて良質の社会資本を整備することなどを目的として設立された「福岡県建設技術情報センター」(粕屋郡篠栗町)の管理運営や、建設材料試験等を行うことを事業内容としている。設立は1995年である。
県内の建設関係業者は、県の工事に参加する場合や、県の技術認可を取得する折、民間の同様機関ではなく、「福岡県建設技術情報センター」が行う試験や研修を要求されるという。
「総合評価」に必要な資料を作成するための業務委託によって、県と特別な関係を持ち、建設業界に大きな影響力を持つ財団法人に企業独自の提案や企業情報などが渡っていることになる。
入札に関する情報が漏れた場合は、競争入札妨害などに直結する可能性が生じる。情報漏えいには厳重な注意を要するはずの入札業務において、県の外郭団体とはいえ「民間」を介入させていることは不適切ではないか。
ちなみに、福岡市が行っている総合評価では、業務の過程に外部機関は入れていない。関係者の間から、県の総合評価の信頼性に疑問の声が上がるのは当然だろう。
実は、「財団法人 福岡県建設技術情報センター」には、別の大きな問題がある。
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