地域でなくてはならない店に
マックスバリュ九州(株)は、会社設立7期目の2009年2月期で年商1,000億円を超える急成長を遂げた。10年2月期はリーマン・ショックによる急激な景気後退の影響で、設立初年度を除くと初めて減益になった。出店もこれまでで最も少ない6店にとどまった。5月8日付けで新社長に就任した柴田英二氏は、イオン本社で食品スーパー事業を統括した経歴を持つ。今後どう立て直していくか、お話を聞いた。
<価格に厳しい九州>
―九州市場の感想はいかがですか。
柴田 イオングループの食品スーパー(SM)であるマックスバリュは北海道から九州まで全国6社ありますが、価格競争が最も激しい地域です。販売単価は、北海道を下回り全国で一番低い。
―柴田社長は、イオン本社でマックスバリュ事業本部長を務められた経験もあります。その眼から見ても、価格的に厳しい市場ですか。
柴田 競争が激しいうえに、(デフレで)単価がますます下がっている。私がマックスバリュ事業本部長をしていた6年前は、食品の販売単価が関東で198円。タイからこちらに来てみると、150円台になっていた。それでも、さらに下がる傾向にある。我々にとって厳しい市場環境です。
―九州では有力なディスカウントストアがひしめいています。どうやって戦っていきますか。
柴田 商品が良いから、品質が良いからといって、高く売っていてはお客さまは店に来てくれません。安さでは対抗していきます。とは言っても、単純な安売りでは会社が成り立たない。安く売っても成り立つ仕組みを作っていかなければなりません。
むしろ大事なのは、安さよりも客にとってなくてはならないSMになっていくことでしょう。
―と言いますと。
柴田 少子高齢化社会を迎え、お年寄りが増えている。一方で、都市化が進み、地方では若者が減って過疎化が進んでいる。買い物するのに車で遠方まで行かなければならず、車を運転しない高齢者は困っている。そうしたお年寄りに店から商品を配達してあげられれば、そのスーパーは地域にとってなくてはならない存在になるはず。昔あった「御用聞き」です。マックスバリュが今すぐやるとは言えませんが、顧客から重宝がられる店になっていきたい。
たとえばお盆が近づけば、地域でほかに扱っている店がなければ盆提灯や灯篭を置いても良いのではないでしょうか。「あの店に行くと、普段の暮らしに必要なものがすべて揃っている」というSMを目指したい。
【工藤 勝広】
柴田 英二(しばた・えいじ)氏
1955年6月3日生まれ。広島大学卒後、79年3月ジャスコ(現イオン)入社。97年マックスバリュ事業本部商品部長、02年マックスバリュ事業本部長、04年商品戦略・トップバリュ本部長、06年3月イオンタイランド社長を経て、今年5月8日マックスバリュ九州代表取締役社長に就任。
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