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ビタミンのはなし(18)~疫学からみた栄養・食糧とガン(2)
特別取材
2010年5月31日 08:00
伊藤 仁

 日本人の死亡原因の第1位はガンであり、ここ30年ガンによる死亡者数は毎年増加している。部位別では肺ガン、胃ガン、大腸ガンの順である。男女を問わず喫煙の習慣が大衆化した1970年以降、肺ガンによる死者は驚異的な増え方であり、2007年の男性では70年の5倍強となっている。また、大腸ガンも喫煙と同様に食生活の肉食化に伴い増加傾向にある。
 それに比して、戦前・戦後を通じてガンによる死亡の最大の原因であった胃ガンによる死亡者数は70年頃までは増加していたが、以後は横ばい状態で年間男女計で約5万人である。胃ガンによる死亡者が増加していない要因は、過去30年近く国・地方の、特に保健所などによる食生活の改善活動や栄養教育が奏効した結果ではないかと考える。東北地方、隣り合わせの秋田県と岩手県では、戦後も80年頃までは、秋田県の胃ガンによる死亡者数は岩手県をはるかに凌駕して全国的にも上位にランクされていた。
 加美山茂利(秋田大学)が70年代後半に秋田県と岩手県の調査地区の食生活、特に下記の左表の変異原性関連食品の摂取状況を調査した結果、陽性化食品での摂取差はほとんどないのに比し、右表にあるように陰性化食品の摂取では秋田は岩手に比べて低く、胃ガンの高頻度の発生は陰性化食品の摂取不足と関連しているのではないかと考えられた。

変異原性関連食品、陰性化食品の摂取率  現在、秋田県の胃ガンによる死亡者数は劇的に減少している。
 前回の廣畑 富雄の疫学調査の結果と総合していえることは、食生活の改善、すなわち、食物繊維に富み、ベータ・カロテン、ビタミンAやビタミンCをはじめとするビタミン・ミネラルを多く含む野菜等の食品を摂取することが、ガン予防の大きなポイントである。同時にたばこをやめ、酒を控えめにして毎日ウオーキングなどの運動をきちんと行なうことが重要である。廣畑・加美山の両名の研究が、今から40年~30年前であることに最大の敬意を表したい。

(つづく)

<プロフィール>
伊藤 仁(いとう ひとし)100308_ito.jpg
 1966年に早稲田大学を卒業後、ビタミンのパイオニアで世界最大のビタミンメーカーRoche(ロシュ)社(本社:スイス)日本法人、日本ロシュ(株)に就職。「ビタミン広報センター」の創設・運営に関わる。01年から06年まで(財)日本健康・栄養食品協会に在籍。その間、健康食品部でJHFAマークの規格基準の設定業務に携わる。栄養食品部長を最後に退任。


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