米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移転先を、自民党政権時代と同じ同県名護市の辺野古周辺とすることを表明した鳩山首相。自らの発言が、政権存続を脅かし、民主党への信頼まで失わせた責任は重い。辞任へのカウントダウンが始まった。
「あとはいつ辞めるかだけ。鳩山さんの仕事は総理を辞めることだけだ」。ある民主党関係者は吐き捨てるように語る。
「(移設先は)最低でも県外」。「5月末までの決着」。前者は昨年夏の総選挙で、当時まだ民主党代表だった首相が繰り返し発言したものであり、後者は首相となってから、自ら普天間問題の解決期限を設定したものだ。
どちらも党として機関決定した内容ではない。しかし、首相の発言は、政府と民主党に一定の責任を負わせることになる。そのことに思い至らなかった鳩山首相の幼稚さが、今日の混乱を招いたと言っても過言ではない。民主党内でも「辞任は当然」との見方が大半だろう。問題はそのタイミングだ。
考えられる辞任の時期はふたつ。まず「参院選前」だが、公示まで1か月となったこの時期に辞めても、党勢挽回につながるとの見方は少ない。「辺野古回帰」を決めたものの、普天間問題を5月末まで引きずることは確実。沖縄の激しい反対運動が予想される上、有権者による「公約違反」への批判は免れない。普天間問題が象徴するように、民主党はマニフェストや選挙中の訴えを平気で反故にする政党との評価が定まりつつある。選挙前に表紙だけを替えても、売れ行きは伸びないと見るほうが妥当である。鳩山首相が参院選前に辞めても、参院選の勝利はおぼつかないというのが実情なのだ。
ならば、敗北が予想される参院選の責任を含め、すべてを鳩山首相に負ってもらうというのが現実的な選択となる。参院選前に鳩山首相が辞めても、選挙で惨敗すれば次の首相も「憲政の常道」に従って責任を取らされる。2人の首を差し出すか、ひとりに留めるかのどちらかなのだ。
「鳩山さんの発言で始まった騒ぎ。すべての責任は鳩山さんが負うべき。参院選で負けても、衆議院には300以上の議席がある。3年後の(衆・参)ダブル選挙までは解散しない。誰が(首相を)やっても負けるのなら、トップがすべてを引き受けるのは当然。参院選後に粛々と(首相の座を)引けばいい。それまでは(首相を)支えると言うしかない」(前出、民主党関係者)。
首相を見放した民主党が、参院選までは支えざるを得ないという奇妙な状況になりそうだ。
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