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地域自立の新ビジョン

山﨑養世講演録(1)敗戦した日本経済の復活には高速道路無料化が不可欠
地域自立の新ビジョン
2010年5月 3日 15:51

<本特集について>kaijo.jpg
 2010年4月19日(月)、NetIB-NEWSは「激変時代の日本 地域自立の新ビジョン」シンポジウムをアクロス福岡にて開催しました。本記事では同シンポジウムのなかから総務省顧問・山﨑養世氏による講演内容を一部抜粋して紹介します。

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 私はもともと、2000年くらいまで金融マンを20年やっておりまして、最初は大和証券に12年いました。それからゴールドマン・サックスに8年。もともとは福岡の出身で、実は今も福岡市民で住民票は福岡にあります。修猷館の同級生と結婚して家族はこちらにいるものですから、毎週東京から福岡に帰ってきております。そのため、福岡には縁があるというか、こちらが住民票上では地元でございます。
 去年、たしかに政権交代がありました。でも、あまり景気が良くならない、悪くなるのではないか、鳩山政権は大丈夫か―これが選挙終了後に多くの方々が抱いた心配であり、失望であり、どうなるのだろうかという不安でしょう。それは私も同感で、もう少し民主党にはしっかりやってほしい。
 日本では、経済は政治から独立していると考える人が多い。たしかに日々の経済はそうです。今日の株価が上がるか下がるかということは、基本的に政治とはあまり関係ありません。だけど、大きな枠組みでは常に政治、その前に軍事と関係があります。軍事の大きな枠組み変更が、政治と社会体制の次に経済を変更させる。この順番は昔から一度も変わりません。ですから、安全保障というのは人間の存在の基本という意味で、これをゆるがすと大変なことになるというのは鳩山首相が日々かみしめているところです。
 たとえば、元首相の岸信介さんはそこを押さえていたから、アメリカにとって日本は味方で役に立つ国になるぞと思いきりPRしました。この人は戦後、戦犯として逮捕されましたが、拘置所にいながらにして世界の変化をすべて分析していました。満州国の経済計画を立てて5倍の経済力にしたのも、朝鮮人100万人雇用計画で経済発展させたのも岸さんだった。サイパン島が陥落した瞬間に「これで戦争は負けではないか」「これ以上日本人を殺してどうするんだ」といって商工大臣を辞めたから、東條英機内閣が瓦解しました。それくらい見通しのいい人です。
 そして戦後、巣鴨プリズンに入って何をやったか。どうすればアメリカが日本を同盟国としてアジアに橋頭堡を築き、アジアすべてをアメリカの味方にするのかという長期計画を提出しました。これで無罪放免となり、すぐに自民党の幹事長となりました。

ドイツの経済計画
 その岸さんが戦前学んだのは、アメリカではなくドイツの経済計画です。ヒトラーのそれを真似たのです。そのなかで、高速道路と新幹線をつくろうという話が出てきます。それにより、アメリカに物を輸出し買ってもらえるような国家になるのだということです。場所は、太平洋ベルト地帯、東京から神戸まで。ここに人と物とお金が集まる仕組みをつくる。
 当時の世界最新の交通システムは新幹線でした。これは日本人の技術です。高速道路をつくれといったのはアメリカなのです。当時の大統領であるアイゼンハワーは、連合軍最高司令官としてヒトラーを破った人物でもあります。
 ヒトラーはなぜあんなに強かったのか。彼が政権をとったのは1933年、ワイマール共和国が破綻した後です。当時のドイツはヨーロッパのなかで最も経済が破綻しており、どうしようもなかった。それが5年後にはヨーロッパ一の経済大国となりました。その一番の大きな要因が、無料の高速道路をつくったことです。そしてフォルクスワーゲンという自動車を開発したこと。これで、バラバラだったドイツ経済がひとつになったのです。また、銀行が潰れたら国家が救済するという金融政策の手当てもしました。
 ドイツは失業者が600万人いましたが、こうした政策が実り30万人にまで減りました。高速道路というひとつのネットワークになったことで、1日でどこでも行ける国になり、それがものすごい経済効果を生みました。最初から無料だったのですから。
 今のドイツは新幹線も鉄道も路面電車もどんどんできていますが、私は自動車だけが良くなればいいと言っているわけではありません。ドイツは車道の横に歩道があり、古い街の真ん中は歩けるようになっていて車を入れさせない。
 だから、高速道路をつくって車だけにしろというのではなく、さまざまな交通を一緒に入れればいいじゃないですか。なぜドイツと同じことができないのでしょうか。

(つづく)

yamazaki_100_100.jpg【山﨑 養世(やまざき やすよ)】
1958年生まれ。福岡市出身。東京大学経済学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)取得。大和証券を経て、ゴールドマン・サックス投信社長として同社を外資系トップの投信会社に育てる。ゴールドマン・サックス本社パートナー(共同経営者)等を歴任。02年、同社を辞し、シンクタンク山崎養世事務所を設立。金融・財政・国際経済問題等の調査・研究、政策提言を行なう。09年10月、総務省顧問に就任。09年12月成長戦略総合研究所を設立、理事長に就任。

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2010年5月 6日 08:00
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