10日、民主党が今夏の参院選比例区で柔道金メダリスト・谷亮子氏を公認候補として擁立することを発表した。政策ではなく、タレント、スポーツ選手に頼る選挙のあり方には疑問がある。
民主党はこれまで、落語家の桂きん枝、タレントの岡崎友紀、五輪・体操銀メダリストの池谷幸雄の3氏を比例区で、五輪・自転車競技の銀メダリスト長塚智広氏を茨城選挙区、大阪選挙区にはタレント・岡部まり氏を擁立している。小沢幹事長と谷氏が並んで会見を行った10日には、歌手の庄野真代氏を比例区で公認することも決めている。低支持率にあえぐ政権政党のなりふり構わぬ姿である。自民党と何も変わらない。
福岡市内の40代サラリーマンは、「一流のアスリートの姿には感動するが、政治の場で何をやろうとするのか分からない。スポーツ振興を図るためなら、競技で活躍することで表現してほしい。やるのなら二股をかけるべきではない。政治はそんなに甘いものではないはずだ」と語る。
また、50代の主婦は「まるで芸能・スポーツクラブ。有名人の人気に頼るのではなく、政策で勝負し、有権者を引き付けるべき。民主党にはうんざり」とにべもない。
自民党は元プロ野球選手の堀内恒夫氏を比例区で、同じく石井浩郎氏を秋田選挙区で擁立。たちあがれ日本も元プロ野球選手の中畑清氏を比例区で出馬させる。こちらも「人気」優先の人選である。
根底には、タレント人気に頼らなければ有権者を引き付けられないという政党の堕落がある。サプライズで一時的に票を呼び込んでも、政治そのものへの不信感を拭い去ることはできない。
国会議員には、月130万円あまりの歳費のほか、ボーナスが約640万円、文書通信交通滞在費が月100万円支払われる。このほか年間400億円近い政党交付金も支給されている。「政治」への対価は十分すぎるほどだ。それだけに、議員は真剣に政治と取り組むべきだし、実績を重ねてもらわなければ意味がない。せめて出馬するタレント候補たちが、「政治家」として国民の期待に応えることを望みたい。
政治や経済について長い時間をかけて研鑽を積み、国家をより良き方向に導くのが政治に課せられた使命であり、責務である。知名度や人気に頼る状況が続く限り、この国の政治が熟成することはない。そうした意味で、安易な有名人担ぎ出しには反対の意を表明しておきたい。
候補者個々の政策、政治信条、実行力について、しっかりと選別する目が有権者の側にも求められていることは言うまでもない。
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