<400億円握る>
平成初頭のバブルでは不動産成金を生んだが、大半は潰れた。不動産成金は不動産をすべて処分してキャッシュ化すれば心配はない。ところが、必ず儲けを不動産に再投入する習性がある。よって、バブルが弾けたときに苦しむ宿命が待っている。今回のバブル高揚時期には以前と全く違った傾向が現れた。株売却=M&Aによる大金を握る成功の例である。その握った金が半端ではない。10億円単位ではないのだ。100億円単位なのである。
その先行馬がキューサイの元オーナーである長谷川氏だ。当時のキューサイは上場していた。それを非上場化するため、金融子会社の買収会社は600億円強の資金を注入した。長谷川一党は430億円の株売却資金を得た。その資金を元手に長谷川一党は生活の基盤をロンドンに移した。「税金申告のためか、ビザの都合のためか」原因は定かでないが、時々福岡には戻ってきているようだ。食品メーカーとしてのキューサイには600億円の価値はつかない。青汁通販の潜在的魅力に値がついたのである。
余談だが、長谷川氏が会長を務めていた教育塾があった。その事務局長が、財政基盤を強くするため企業会員の要請にやってきた。「年間1口3万とか5万の会員になる協力はしますよ。それよりも長谷川さんに基本財団として資金10億くらいお願いしたらどうですか」とアドバイスした。この事務局長は苦しい顔つきになった。あとで調べてみると、資金提供は皆無だったとか。40億円の金を握ったならば我々に嘴(くちばし)を挟む余地はない。400億円を懐に入れたのであれば、長谷川氏が関与した教育塾に支援してもよさそうだ。まー、100億円以上握ったならば他人様からの論評の覚悟が必要である。注目すべきは、長谷川氏がロンドンで息をひきとる覚悟があるかどうかだ。
<次に300億円握った>
福岡は通販の先端地域である。洗顔化粧品の「ヴァーナル」が成功した。これに勢いづいて後発組が参入してきた。「やずや」「キューサイ」もその組である。時間が経つと、若い世代も「通販で一山当てよう」と雪崩を打って参入してきた。特に不動産業界から転入してきたケースが多い。その代表格が「エバーライフ」である。商品名は「皇潤」という。かなりTVコマーシャルが打たれているから、認知度は高いはずだ。
創業者は井康彦氏。彼も不動産業界の営業マンをしてきた。「通販で一攫千金を握れる」予感がしたそうだ。井氏に投資ファンドが寄り添って耳打ちしてきた。「御社を買いたい。いくらで譲りますか」。井氏は不動産の転売を数多くしてきた体験がある。「会社も一つの不動産と考え最大値のところで売るべき」と判断した。会社の値付けは300億円だった。キューサイの長谷川氏の場合は「ビジネス人生総決算時期」であったから良かった。400億円握って引退できた。井氏はまだ50歳には手が届いていない。ハワイでサーフィン・波乗りをしても退屈になる。ハワイで2カ月充電すると帰福してビジネスに精力を尽くす。まだビジネス人生のクロージングの時期ではない。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら