建国以来、上海はずっと中国製造業の都として尊敬されています。近年、金融、貿易、海運など、サービス関連の産業が迅速に発展してきているものの、製造業が依然として上海GDPの半分ぐらいを占めています。
長年培ってきた上海の製造業が既に成熟で、既成のシステムや軌道に乗って、毎日稼動しています。巨大な製造業には、起業やイノベーションに残る空間は限られています。
製造業を維持するには、どんな人材が必要でしょうか。技術を持ち、責任感があり、チームワークのできる労働者と効率化を図る管理者です。このような人材が生まれるように、政府や教育機関が動いています。
すなわち、強大な製造業が存在する以上、その経済システムのなかではアントレプレナーはいらないし、生まれても結構圧迫され、育つスペースがありません。
<地元市場の甘さ>
上海は経済的に立地条件が良過ぎると指摘されます。地元の市場規模が大きくて、普通の企業がわずかな市場シェアを獲得していれば生き残ります。逆に言えば、企業は地方のライバルより、前向きに一生懸命頑張らなければいけないのですが。危機感が不足しています。
アントレプレナーが成長するには、いつも危惧を持つ必要があります。生死存亡にかかって、より多くの顧客に受け入れられるように、いつでも改善・革新を継続することで、より強くなります。企業が毎日のように成長するかたわら、アントレプレナーが自然に誕生するのです。
<近眼視の雰囲気>
繁栄する商業都市の地元市場は、目先の利益にウェイトを置きすぎるような気がします。あるいは、どういうふうに最短期間で大儲けになれるかということだけに興味が深いように思えます。
しかし、アントレプレナーを育成するには、儲けを目的にするより、むしろ事業に専念し、利益はひとつの結果にすぎないと認識しなければなりません。時間をかけるだけではなく、一連の試行錯誤する過程で、窮屈または破綻に近づく状態に陥るかもしれない。そんな覚悟がなければ、あるいは失敗を経験したことがなければ、簡単に企業の成長を成し遂げられません。失敗や時間を惜しまないことだけが、アントレプレナーになる鍵とも言えるでしょう。
企業の成長は、優秀なアントレプレナーが導くことが不可欠と思われながら、アントレプレナーの成長も自分なりの企業や空気が欠かせないと思いませんか?
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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