中古住宅販売戸数ならびに新設住宅着工戸数が回復、雇用統計もプラスに転じる。
下表に見られるように中古住宅販売は2009年7月から対前年同月比で前年実績を上回っている。米国では中古住宅市場の規模が新築住宅着工戸数よりも大きく、また実績の発表も早いために住宅指標の先行指標としても注目される。
低所得者層向けのサブプライムローン問題から世界同時不況に陥ったが、中古ならびに新築市場が共に底打ちしたことから家電や自動車等の購買が増加するものとして期待される。
また、6月4日のCNNニュースによると、同日オバマ大統領は5月の非農業部門の雇用統計が前月比43万1,000人増となったことを引合いに出し、米国経済が確実に回復に向かっている証拠だと発言した。こうしたことにより木材等の住宅資材の市況回復にも繋がる見込だ。
また、日本円の為替レートも対米ドルに対しては弱含んでいることも輸入価格の上昇に繋がることになる。
一方で、日本の1月から3月の国内総生産(GDP)は年率換算(速報値)で4.9%(これは確定値で4.0%近くまで修正される見込み)という高い数値になった。前・麻生政権が打ち出した巨額の景気対策効果に支えられているとはいえ、近来でも予想を上回る回復である。そしてこの4.9%の中に民間住宅投資が5期(15ヶ月間)振りに0.3%とプラスに転じている。その他の指標も景気回復を示す数字になっている。
日本の4月の新設住宅着工戸数も66,586戸と実に17カ月振りに僅か0.6%ではあるが、対前年を上回った。もっともこの数字は首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)におけるマンション着工戸数が対前年同月比で55%増になったこと、中でも東京都の181.5%増と神奈川県が24%増と新設住宅着工戸数の回復を押し上げたことが大きい。
また、一戸建ての分譲住宅も首都圏は対前年同月比24.5%増となっており一建設、飯田建設、アーネストワン等の所謂パワービルダーの伸びが大きい。このために既に杉丸太や合板等の市況が上昇しているが、先述のように米国の住宅統計や雇用統計が好転し景気回復が本調子になってくると更に価格高騰を呼ぶと思われる。
しかし、4月の新設住宅着工戸数が17カ月振りに増加したからと言って手放しで喜ぶには早すぎる。首都圏ですら東京都と神奈川県が大幅増になっただけで他の県の増加率は低く、ましてや他の圏は依然としてマイナス圏から脱しきれていない。
九州・山口地区では福岡県の15.9%増、大分県の2.5%増以外は軒並み二桁減となっており、九州地区の総数(山口県を除く)は▲1.9%の減少である。
こうして先行きを楽観できないために住宅資材メーカーから流通、住宅メーカー共に生き残りを賭けてさまざまな動きが見られる。
厨房機器のサンウェーブ工業を傘下に収めた住生活グループ(トステム&INAX)も国内シェアの30%に届かず、タカラスタンダードやクリナップとの三つ巴の戦いが激化する。生産工場の統廃合を進めると同時に中国での販売を現在の46億円から2013年度には約10倍の500億円まで拡大する計画を発表した。中国事業拡大の主力になるのは昨年INAXが買収した水栓金具の世界大手アメリカン・スタンダードのアジア・パシフィック部門だ。また、住生活グループだけでなくTOTOもリフォーム部門の強化を図る。
トヨタ自動車は住宅製造部門を切り離し、10月1日をメドにトヨタホームへ移管することにした。同時にトヨタ自動車が持っているミサワホームの全株式トヨタ自動車から譲渡される294億円の資産の中に含めてトヨタホームに移し、トヨタホーム5月末に野村プリンシパル・ファイナンスからミサワホーム株式の14.4%を約18億円で取得したことと併せて、ミサワホームの株式の27.8%を所有することになり筆頭株主として提携強化を図る。
ヤマハは子会社ヤマハリビングテックを投資ファンド日本産業パートナーズに売却し住宅設備機器製販事業からの撤退を発表した。同じく厨房機器メーカー「ミカド」もタカラスタンダードへの統合策を含めて再生を図ろうとしていたが、昨年12月24日に大阪地裁へ民事再生を申請していたが今年の3月4日に同地裁から再生手続き廃止決定の通知を受け倒産している。
今後は住宅資材については輸入品を中心に値上がりしていく情勢が見込まれるが住宅着工戸数の回復力が弱いと販売価格へ転嫁できずに住宅メーカーの採算が悪化することも考えられる。年内一杯はエコポイントや相続税優遇策等の効果で受注も上向いてきているが、コストプッシュ要因が強まってくるだけに受注力とバイイングパワーが強い大手だけが有利に価格協省力を発揮できる可能性が高い。
【徳島】
◆住宅情報サイトはこちら >>
住宅情報サイトでは住宅関する情報を一括閲覧できるようにしております。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら