「生存か死滅か、考えなければいけない問題だ。黙って運命の暴虐な毒矢の痛みを耐え忍ぶか、あるいは果てしない苦難に立ち上がって反抗するか」。これは今の上海・不動産業界の実情を如実に伝える表現です。
今年4月中旬から中央政府により実施された不動産業界に対する取り締りの結果として、同業界は十字路に立たされています。
取り締り開始から1ヵ月半が経ったころ、それまで盛況だった市場は一気に冷え込みました。あまりにも急速な変化に遭遇した、上海・不動産業界の現状を見てみましょう。
<デベロッパーは様子見>
統計では、5月1日から17日まで、上海市内33ヵ所、計50万m²の新築マンションの販売が許可されました。しかし、成約面積はたったの3万m²です。そのなかの、17ヵ所においては成約がゼロでした。成約があった16ヵ所のうち9ヵ所においても成約件数は10件以下です。
さらには、浦東にある1ヵ所の新築マンションにおいて75%の買主が手付金を払ったにもかかわらず、購入取り消しに踏み切ったトラブルまで起こりました。同マンションでは、100軒余りの物件を4月から発売を始め、80軒以上が予約されたという盛況ぶりでした。
調査の結果、普通住宅や高級マンション、別荘において、市内中心部、郊外を問わず、取り締りが実施されて以来、物件成約数に著しい減少傾向が見られます。理由として、以下の3点を専門家が指摘しています。
(1)顧客が5割の頭金を払えない。
(2)銀行の住宅ローンが厳しく制限され、申し込みしても許可されない。
(3)物件価格下落の予測があって顧客が待機している。
一方、物件の売れ行きが悲観視されるなか、価格は下がるどころか少々上昇しています。一見、不思議に思われますが、あるデベロッパーがその理由を話してくれました。
(1)物件を何回かに分けて販売していると、間取りや内装などでより良い商品が続々と出てくる。今出している物件が、前のモノより優れている以上、値段がより高くなるのは当然なことだ。
(2)当面の値上げは、将来のまさかの時に備え、値下げできるようにするため。
(3)簡易に値下げにすると、前の買主から払い戻しを求められる恐れがある。
(4)不動産業界全体の成り行きが不透明であるなか、価格方針を大幅に変動するのは相応しくない。
そして、現段階の対応策として、デベロッパーはふたつの行動を取りました。
(1)新規発売を延期する。どうせ売れないから、中央政府の政策意図がもっと明らかになった後で価格戦略を考えて公開する。(実際に今年5月の新規発売物件数がリーマン・ショックの2008年同月比でかなり減っています)
(2)新築物件を売るより賃貸に転じる。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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