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労務管理は対症療法から予防の時代へ
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2010年6月11日 08:00
社会保険労務士 浜地 慎一 氏

浜地 慎一 氏 わが国でも失業率が5%を超える厳しい雇用情勢が続いている。このような雇用環境を背景に、労使間のトラブルも急増しているのが現状だ。なかでも近年、従来型の企業内労働組合と企業との対立という構図から、労働者個人と企業との個別労働紛争が目立ってきているのが特徴的で、その中身もより複雑・煩雑化している。企業サイドもこのような現実を踏まえ、労働紛争が発生してから対症療法的に対応するのではなく、企業内自主ルールを整備・拡充するなど、予防的な労働者管理の必要性に迫られている。今回は地元福岡で豊富な経験と実績を持つ社会保険労務士の浜地慎一氏に企業内対策のあり方について話を聞いてみた。

個別労働紛争は増加の一途
 厳しい経済情勢を背景に、企業と労働者が雇用契約などをめぐってトラブルとなるケースが増えています。ここ最近の労使トラブルでは、個々の従業員がその勤務先である会社を相手取ってトラブルとなる「個別労働紛争」が中心となってきており、都道府県の労働局や労働基準監督署で受け付けている個別の相談件数は、2008年度で108万件と過去最高を更新しました。また、個別労働紛争の迅速な解決を目指して06年からスタートした地方裁判所の「労働審判」も急増中で、日本経済新聞11月15日付朝刊によれば、今年8月までの新規受理件数は2,272件と、すでに昨年の2,052件を上回っているとされています。
 この「個別労働紛争」をめぐっては、新聞をはじめとするメディアでも頻繁に取り上げられてきており、働く側にとっては相談のきっかけが増えることで解決への敷居が下がっているとも言え、そういう面から見れば好ましい状況といえます。しかし、その分経営者にとっては、そのための対応が不可避な状況となってきているのが労務管理の実際でしょう。

就業環境における諸問題の把握が大事
 企業内の紛争は、そもそも自主解決が基本とされています(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第2条)。従業員が公的な機関に駆け込まざるを得なくなる前に、その問題を汲み上げることができるようなルール(仕組み)づくりが企業内にあって、それが十分に機能していれば、"ある日突然"紛争調整委員会から「あっせん開始通知書」が届いたり、地方裁判所から「労働審判手続申立書」が届いたりといった緊急事態を未然に防ぐことが期待できるのです。
 企業内の自主的な紛争解決のルールとは、具体的に挙げれば「社内苦情処理委員会」といったものや、もっと取り扱う内容を絞って、たとえば「労働時間等設定改善委員会」のような機関を社内に設け、従業員に周知し、積極的な利用を促すなど一連の仕組みが考えられます。
 どのような仕組みであれ、会社のルールである以上は、すでに作成してある就業規則との連携や一貫性が求められます。つまり、先に挙げたような「社内紛争の自主解決ルール」も前提としては、あらかじめ就業規則に記載することから始まるべきなのですが、ここで重要なのは、そもそも今の就業規則がどこまで実際の就業環境の諸問題に対応できているのか、実態とのズレや必要な決め事の不足などに関し、現状を把握し潜在するリスクを洗い出しておくことです。それがトラブルを未然に避けるための基本的なポイントになります。
 冒頭に挙げたような雇用経済情勢のなかでは、企業経営のリスクヘッジとして、労働紛争が起こってからの対応に備える以前に、予防のための労務管理という観点から就業規則その他職場環境の再点検を実施する意義は大きいと考えられます。

職場を超えた トータルサポートも展開
 私の日々の業務を振り返ってみますと、労務を「リスク」という観点からも捉えていらっしゃる経営者の方は、おのずと先手先手の対応を考え、そのために予測が難しい人事労務の問題が起こりかけた場合でも、それを事前に回避できるか、またはそのことによる経営上のロスを結果として軽減できているようです。
 就業規則をはじめとする労働諸条件の整備はその一環であり、整備の過程で経営者から投げかけられるリクエストの一つひとつにお応えしていくなかで、労務関連の専門士業としての立ち位置から、どこまでが許容範囲なのか、また許容範囲を超えるような問いかけには、それが「どのくらいの距離のズレであり」かつ「どの程度のリスクなのか」--を客観的に示すことを心がけている毎日です。
 経営者の思いを従業員にどう伝えるのか、その大部分を担うのが処遇であり、人事制度であることを念頭に、より良好な労使関係の実現が労務士である私の使命と考えています。
 また一方で、労務問題は、「職場環境」だけでなく、その裏側になる従業員の生活と密着していることから、最近では、経済・雇用情勢の変動だけでなく、人口構成、生活スタイル、価値観などさまざまな要素の変容と絡めて取り上げられることが当たり前となっています。関連する法令・政策・制度も多岐にわたるため、優先順位をつけて企業経営に取り入れていく必要があります。
 「知らなくて損をする」だけならまだしも、「知らなかったばかりに大きなダメージを受けた」という事態が労務問題でも起こっていること、それが企業経営の死活問題にもなりかねないということを肝に銘じ、「企業経営の取りこぼしを防ぐ」という意識で、メリハリのある労務管理の実践をサポートしていくのが、私の労務士としての今後の展望です。

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【プロフィール】 浜地 慎一(はまち しんいち)氏
1968年11月19日生。福岡県立修猷館高校を経て、北海道大学文学部行動科学科を卒業。民間企業の営業職、人事部を経て04年社会保険労務士事務所(福岡市南区)に就職。06年5月独立開業。主な顧問先は食品製造業、保育園、病院、鉄骨加工業ほか多数の県内各企業。現在、労務をはじめ、よろず相談相手として「求められる以上の仕事」で応える労務士を目指し、「即時対応」「任せて安心」をモットーに業務展開中。全国社会保険労務士連合会(登録番号第40060032号)。

所在地:〒810-0074 福岡県福岡市中央区大手門1丁目8-16-601
電 話:092-791-6202
E-mail:hamachi@mx21.tiki.ne.jp


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