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上海最先端レポート

上海農業が全国のモデルケースに(上)~日本人が知らない中国事情(29)
上海最先端レポート
2010年6月15日 11:10
劉 剛

 「上海に農業があるの?」。上海に行ったことがある方は、記事の見出しを見てそういう疑問を持つかもしれません。たしかに、コンクリート・ジャングルの上海都心部には農地は極端に少ない。しかし、郊外に農地を所持していることは事実です。
 農地面積は地方と比べらものにならないほど小さいですが、上海の農家が農業の発展にかける情熱は、全国のどこにも負けないと言ってもいいでしょう。上海農業は農産品の消費市場に近く、研究する人材や開発資金も豊富にあるため、上海独特の発展を見せつつあります。

<情報化を促進する政府>

上海郊外にある農場 上海市農業委員会(市政府の農業指導部)は、10年前から農業の情報化に取り組んでいます。志がある大学生を参加させて、先進情報サービス技術を利用した、農家への効率的な情報提供について模索し続けてきました。
 そして2002年8月、「農業科学技術ホットライン」が開通しました。これは100名以上の農業専門家たちが、電話を通じて農家にいろいろな技術指導を与えるというものです。09年末までで利用者は10万人を超えました。「農業技術スタンド」として農家から賞賛されています。

 また、長い間、農業に関する政策、技術、市場情報は、各部署が独自に発信し、管理していました。そのため、情報の収集やその有効利用に手間がかかるだけではなく、時には各部署の情報が食い違うこともありました。それらの問題点を解消するべく「農業総合サービス情報プラットフォーム」というネットサービスが作り上げられたのです。これは農村に端末を配置し、農家が簡単に分かりやすい方法で情報を読み取ることができるというものです。同プラットフォームは、完成して以来、110カ所の農業関連組織や900カ所の農村に普及しています。利用者人数は、すでに40万人を超えました。同プラットフォームを通じて、遠距離の農家を対象に実施された通信授業も高く評価されています。

 一方で、数多くの小規模農家と変化する市場をどう結びつけるか。ずっと政府が悩み続けている課題でした。そして、調査を重ねた結果、09年に「農産品電子ビジネスプラットフォーム」が生み出されました。これは1年以上の努力を積んだ結果、上海ないし華東地区で一番になりました。ここで扱っている8割の商品が独特であり、また、供給側は市農業委員会の認可を受けており、消費者にとって安心です。上海各区域の特産品が登録しているほか、農家も随時、地産の農産品を更新することができます。一方、市民もネットで注文し、24時間以内に届けてくれるため利便性が良く、人気は高まり続けています。

(つづく)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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