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上海最先端レポート

上海農業が全国のモデルケースに(下)~日本人が知らない中国事情(30)
上海最先端レポート
2010年6月16日 08:00
劉 剛

<技術をアップデートする科学研究>

 限られている農地において、多様化かつ効率化した農業経営ができるように上海の農業研究者は考え続けています。

 最近、上海農業科学研究院が脚光を浴びています。同院の研究員が畑にて薬用ミミズの養殖に成功しました。薬用ミミズを乾したものは、心臓や血管疾病の治療として用いられる貴重な漢方薬の材料になります。ミミズを養殖する際、大量の家畜糞便を消耗しながら土壌の地力を上げます。実際にトウモロコシをその畑に栽培してみて、収穫量が平均を30%上回っています。さらに、畑の周囲に溝を作り、田うなぎを養殖するとミミズがエサになって田うなぎが毎年絶えず繁殖し、またひとつの収入源となります。

 また、政府系の農場は小麦や稲の品種改良に力を入れています。郊外の普通の畑で小麦産出が275キロ/1亩(約667m2)に対し、最新の品種では520キロあまりに達しました。稲の産出は600キロ/1亩に上がり、安定しています。これらの優良品種を農家に提供することによって、地元の米産出量が大幅に上がったのです。

<農家に魅力的な農業産業化>

 一人ひとりの農家の力は小さくて、とても市場に対抗できません。豊作にしても、不作にしても、悩みがあります。どうやって農家が安定した収入を得られるか。政府が様々な方法を検証しています。そこで最近、農業の産業化が注目されています。

上海・崇明島にある大農場 政府が農家を結束し、地域ごとで専業団体を作ります。その団体の元で、お互いに助け合いながら、生産や販売において共同で行動を取ります。主に各団体がひとつの農産品に専念し、みんなの力を合わせるため、値段交渉やリスクの未然防止となります。今、上海の郊外で葡萄、メロン、桃、スイカ、イチゴなどを中心にして、ブランド化を図る団体が作られました。その団体の努力によって、品質の基準が徐々に普及し「いい品質、いい価格」の目標を成し遂げたのです。

 一方で、政府は重点的に1カ所の農産品加工企業を培い、その企業が農家らと契約し、連携関係を結びつけています。企業が発展するに伴い、より多くの農家が牽引され、一緒に伸びていくのです。それによって、企業が安定した原材料を確保できるだけではなく、農家に技術指導を行ない、農産品の品質アップにも繋がります。一方、農家はセールスの不安から離れ、いかにいいモノを作れるかに専念します。モデルとしては、すでにブランド化した上海・崇明島の「老杜鴨鴨養殖有限公司」が挙げられます。当社は182戸の農家と契約し、それらの農家もまた周辺別の農家を動かし、360戸の農家まで合作の輪を広げています。会社が安定した価格で農産品を仕入れすることによって、農家を市場の景況の浮沈から守っているのです。

 市民生活の質が向上するにつれ、農産品への注目は高まる一方です。そのようななかで上海の地元農業の躍進に大きな期待が寄せられています。

(了)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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