約1年前に「定年まできちっと公務員は働くようにすべし」との答弁を行なっていた麻生渡・福岡県知事。しかし、15日に開かれた福岡県議会6月定例会で、その内容と矛盾する答弁を行なった。問題の答弁は、佐藤正夫・県議会議員の県庁職員の勧奨退職に関する質問に対して答えたものである。
佐藤県議は、福岡県町村会による裏金接待問題で戒告処分を受け、3月31日に勧奨退職した元県商工部長が、県の推薦で翌4月に県出資の「ふくおかアイスト(財団法人 福岡県産業・科学技術振興財団)」の専務理事に再就職した件について、「優秀なら県で働いていればいいのでは?」と、遠まわしに批判をした。ちなみに、同財団の理事長は麻生知事である。
答弁に立った麻生知事は、「思い切った人事の若返りを図る、勇退して後進に道をあける」ため勧奨退職が行なわれたとの説明をした。また、元商工部長については、「研究職として県庁に入職した特異な経歴の持ち主」のため、同財団に就職したと述べた。その一方で、新たに部長に昇進した55歳の職員を人事の若返りの例にあげた。
「定年まできちっと働かせなければならない」という自らの意思を、わずか1年で忘れてしまったのだろうか。そもそも55歳の部長が「若返り」と言えるのだろうか。佐藤県議は「問題を起こした元商工部長の天下りという"例外"をごまかすため」と指摘する。鳩山元首相は、普天間問題に関する発言を二転三転させて国民の信用を失ったことは記憶に新しい。ぶれてしまった麻生知事を県民はどのような目で見るだろうか。以下、麻生知事の1年3カ月前の発言を議事録より抜粋して掲載する。
「天下り、いわゆる渡りについてでございますけれども、これは国家公務員の場合には勧奨退職が非常に早く行われておるわけでありまして、大体五十代の前半からやっております。そうしますと、早く退職しますから、退職後どうするかということが当然問題になるわけでありまして、これが関連団体への再就職を繰り返すということで、問題になっているような天下り、渡りということにつながっておる。これが現在の公務員制度全般に対します国民の不信ということにつながっているというふうに思います。このような制度は、やはり改革をしなければならないと思っておりますけれども、その改革の方法は、つまるところ定年まできちっと公務員は働くということにしていくという方向ではないかと思っておりまして、私もそのような方向で制度改革をすべしという意見をいろんなところで申し上げておるという次第でございます」(2009.03.10 2月定例会<第15日>本文より)
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