<ITによる開かれた市政>
2006年に総務省官僚から武雄市長に就任し現在2期目の樋渡啓祐氏(40)は次々と型破りのプランを打ち出している。市政の動きや市長の行動を伝えるブログはほぼ毎日、更新。市議会の答弁はネット上で実況中継している。ITを最大限に活用して"開かれた市政"を目指すのがねらいだ。
樋渡市長は、Twitter(ツイッター)も多用している。これは市役所からの情報をより多くの人に知ってもらうためで、先日は「DVDを見やすいパソコンは?」とつぶやくと10人以上のフォロワー(樋渡市長のつぶやきを閲覧できるように登録している人のこと)から、「Mac Book pro13」を勧める返信があり、早速購入したという。
ツイッター・アイドルとして有名な東大工学部卒のかとえみ氏を招き、市民を集めてツイッター講習会も開く。近ごろでは市民から、陳情が映像付きのメールやツイッターで届くようになったという。
「日本のITはアメリカの2年遅れで動いています。それにしてもツイッターの反応は速い。ブログより簡単に出来るし、最高140字という文字制限は、古くから俳句や和歌に親しんできた日本人に合っています」(樋渡市長)。
近く市の職員全員にツイッターを導入させることを考えている。市民にもツイッターを拡げていくつもりだ。市長は冗談めかして「ボクは流行りモノが大好き。日本で一番、飛びつきが早い自治体じゃないかな。いいことなら行政が先に取り入れて、実証実験して、それを住民に拡げていけばいいと思います」という。
<iPadを学校教育に>
最近では、売り出されたばかりのiPadを小学校の教育現場の取り入れようとのアイデアがある。たとえば、音楽の授業でギター演奏ができるソフトが使える。英語の読み上げソフトの活用も考えられる。
「まずは楽しみながらデジタル体験をしてもらいます。ゲーム感覚で押し付けでない内容にしたいですね。台数も全員分でなく、交替で使えば少なくてすみます。モデル校でうまくいけば多くの学校に導入します」(樋渡市長)。
就任と同時にITを使いこなす市長。Yahoo topicsにも掲載され、市長に関連したアクセスは13万件以上。普通の首長が数千件というから破格の数字である。それだけ多くの人が「樋渡イズム」に興味を示しているのだ。
「私は武雄市のグーグル価値をこれからも高めて行きたい。行政にとって、ネットやメデイアで報道されるのも仕事のひとつでしょう」(樋渡市長)
樋渡市長に、これまでの体験や今後の施策についての執筆依頼が来ているという。まだ、1字も書いていないというが秋の出版日は決まっているそうだ。この企画には当初からテレビスタッフも参加しており、ドラマ化も前提のようだ。ベンチャー市長のメディア戦略がどのようなものか。今後のお手並み拝見といったところである。
【関戸 幸治】
<プロフィール>
樋渡啓祐(ひわたし けいすけ)
1969年(昭和44年)11月18日、佐賀県武雄市朝日町生まれ、40歳。武雄中-武雄高-東京大学経済学部卒。94年、総務庁(現、総務省)入局、官房長官官房総務課などを経て、05年、総務省大臣官房秘書課課長補佐で退職。06年、合併後の新・武雄市における初代市長に当選。08年、市民病院の公設民営化に伴い辞職するも再選を果した。
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